＊浴衣 〜With Fell〜 ※軽度の性的、暴力表現注意 ページ28
.
提灯の優しい明りが足元を照らす中、下駄の小気味よい音を立てて、私は待ち合わせ場所へと急ぐ。
先に到着していた彼は、私に気が付くと振り返った。
「よお、A」
私は彼の姿に目を見開いた。
彼が纏う浴衣は、黒地に、金と赤の装飾が袖口にあしらわれていて、彼らしい配色ながらも大人びた雰囲気だ。
意外な着こなしに、ただただ見惚れてしまっていると、彼は肩をすくめる。
「Ah……本当はもう少し派手にしたかったが、地上ではあまり目立つな、とボスに止められてさ」
やれやれと呟く彼に、私はどきどきと高鳴る胸を抑えつつ、着てきてくれて嬉しい、格好いいよと告げた。
「お前、こんな地味なデザインで満足するのか？ まあ、でも。お前のその表情が見られたなら、こんなのもたまには悪くないかもな」
彼は笑みを深めて言うと、ところで……と私の方をしげしげと見つめる。
「――いいな、お前の浴衣。いつもの格好も気に入ってるが……すげぇ色っぽい」
さらりとそんなことを言って、私の髪を掬い怪しく微笑むので、一気に顔を熱くしてしまう。
彼は上機嫌で笑い、行くか、と言って私の腕をぐっと彼の腕に絡ませた。
布越しに伝わる力強い熱に、胸は苦しい程に打ち鳴って……
そんな高揚感の中、彼と共にひとしきり屋台を堪能してから、私は化粧直しで一人屋外の建物に向かった。
「クソッ！ あのジジィ、インチキしやがって……！」
ドアノブに手をかけた時、柄の悪い怒声と、直後に荒々しく物がなぎ倒される音が聞こえて、私は肩をびくりと跳ねさせてしまう。
恐る恐る物陰から覗いてみれば、いかにも不良な姿の男たちが、自販機の前を陣取ってたむろしていて、その中心で、怒り心頭に発した様子の男が暴れていたのだ。
関わってはいけない……本能的に危機感を覚えた私は、すぐに踵を返した。
しかし、慌ててしまったせいで、道端の石に足を躓かせてしまう。不運なことに、その音で彼らに気付かれてしまった。
「あぁ？ 誰だ……って、オイオイ、こりゃあ……」
男は、訝しげにしていた瞳を、私の姿を見た途端に興味深げなものに変えた。
逃げようとした私の腕を乱暴に掴んで、男は仲間に呼び掛ける。
「見ろよ、すげーいい女！ ひょっとして、可哀想なお前を慰めに来たんじゃね？」
声をあげようとするけど、すぐに口は塞がれてしまう。
まともに抵抗することも叶わず、瞬く間に光の射さない場所へと連れ込まれてしまった――
＊つづき ※軽度の性的、暴力表現注意→←＊浴衣 〜With Dream〜
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 43人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
マイ - マーダー！！！！！好き！！ (2023年2月24日 22時) (
レス) id: f9d27c0cdf (このIDを非表示/違反報告)
ユキ - ｱﾞｱﾞｱﾞｱﾞｱﾞナイトメアァァァァア好きぃｯ！ (2022年11月27日 13時) (レス) @page34 id: 785e1889ff (このIDを非表示/違反報告)
かしわ(プロフ) - プリンだべたいさん» プリンだべたい様、かっ、神だなんて……この上ないお褒めの言葉、大変恐縮です……！ ありがとうございます！ (2022年8月28日 20時) (レス) id: c5e96d2eaa (このIDを非表示/違反報告)
プリンだべたい - この作品まじで神すぎる……( ´ཫ` )ｸﾞﾊｧ (2022年8月28日 18時) (レス) @page29 id: 07b9ba0dd4 (このIDを非表示/違反報告)
かしわ(プロフ) - aoさん» 返信ありがとうございます！ そう言って頂けてとても安心しました……！ よかったです！ こちらこそ、素敵なシチュエーションのリクエストをありがとうございました！ (2022年8月25日 12時) (レス) id: 850b2caf1b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：かしわ | 作成日時：2022年8月22日 23時
