＊誕生日ケーキの代わりに 〜With Horror〜 ページ1
.
「……そういやお前さん。誕生日っていつなんだ？」
唐突な質問に、私は目を丸くさせてしまう。
ある日、暗く閉じられたこの世界に迷い込んでしまった私を、彼は狂気的な赤い瞳を興味深げに揺らし、首を掴んで引き留めた。
血濡れて古びた服を纏う彼に見据えられ、私は命の終わりを覚悟した。
しかし意外にも、彼は私を手に掛けることはしなかった。
時折、あらゆる手段で驚かせてきては、私の反応を楽しんだり、耳を塞ぎたくなるような話をしてきたりはしたが、比較的、友好的に接してくれているのだ。
少しだけ安心した私は、彼と徐々に会話を交わすようになった。
そんな折に、尋ねられたのだ。
まさか、人の誕生日に興味があったとは思わず、私は驚きつつ、そういえば今日だった、と答える。
「へぇ、そうだったんだな」
私は頷き、地上で過ごしてきた日々を思い返す。
家族が用意してくれたケーキと、ささやかなご馳走。皆の笑顔。
寂しさが胸に広がり、思わず、また皆で過ごしたかったな……と呟いてしまう。
「……なら、今回は俺と過ごすことになる訳だ？」
実質、帰れないと言われたようで、俯く私の横で、彼は探るような物音を立てる。
そして、私の目の前に、彼の瞳のような赤色の林檎を差し出した。
「生憎、ケーキは用意してやれないが……なに、気まぐれさ」
呆けてしまう私に、彼は首を傾げる。
「なんだ……警戒してんのか？ それとも、このままじゃ食べられないって？ Hum、仕方ねぇな……」
そういう訳ではない、と否定しようとするも、彼がおもむろにシャクリと音を鳴らして林檎にかぶりついたので、ますます戸惑ってしまう。
すると、彼はそのまま私の肩を引き寄せた。
「――じゃあ、これならどうだ？」
私の顎に手を添えると、彼は顔を近づけ、果汁が滴るそれを私の口内に移した。
驚きで声を出せない私に、彼は可笑しそうに笑う。
「Heh heh！ そんなに目を丸くして……本当、お前さんは見てて飽きないなぁ？ 消すのが惜しいくらいに、な」
息がかかる程の距離で、彼は私を見つめる。
その瞬間、恐怖ばかり抱いていた筈の彼の瞳から、何故か目を逸らせなくなる。
それどころか、怪しく疼く‟別の感情”が顔を出し始めるのを感じた。
それを自覚してしまった私は、底知れぬ不安と、静かに沸き上がる熱に、胸を騒がせた――
＊誕生日ケーキの代わりに 〜With Swap (Berry)〜→
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マイ - マーダー！！！！！好き！！ (2023年2月24日 22時) (
レス) id: f9d27c0cdf (このIDを非表示/違反報告)
ユキ - ｱﾞｱﾞｱﾞｱﾞｱﾞナイトメアァァァァア好きぃｯ！ (2022年11月27日 13時) (レス) @page34 id: 785e1889ff (このIDを非表示/違反報告)
かしわ(プロフ) - プリンだべたいさん» プリンだべたい様、かっ、神だなんて……この上ないお褒めの言葉、大変恐縮です……！ ありがとうございます！ (2022年8月28日 20時) (レス) id: c5e96d2eaa (このIDを非表示/違反報告)
プリンだべたい - この作品まじで神すぎる……( ´ཫ` )ｸﾞﾊｧ (2022年8月28日 18時) (レス) @page29 id: 07b9ba0dd4 (このIDを非表示/違反報告)
かしわ(プロフ) - aoさん» 返信ありがとうございます！ そう言って頂けてとても安心しました……！ よかったです！ こちらこそ、素敵なシチュエーションのリクエストをありがとうございました！ (2022年8月25日 12時) (レス) id: 850b2caf1b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：かしわ | 作成日時：2022年8月22日 23時
