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「宵宮さ『お願いだから…近づかないで』……」
嗚咽混じり、途切れ途切れそう言うと彼はあと数歩のところで止まった。
『なな…み、くんも___知ってるよね。わたしが__うづき先輩をたくさん苛めたこと』
『わたしは__罰うけな、きゃ』
『たしかにつらくない、なんてっ言ったら___嘘』
『でも…同情まがいの感情をよせてもらおうなんて、思うほど……落ちぶれてない』
『だから______だから、どうか…私には優しく接しないで』
じっと彼を見据えているはずがだんだんとぼやけ、ついには歪んだ。
堰を切ったかのように涙が流れ出た。
もうとっくのとうに私の心は限界を迎えていたのである。
___
たとえ記憶がなくても、
私が卯月先輩を傷付け、周りの皆んなにも迷惑をかけたことに変わりはない。
だから然るべき罰を受ける_____
それにはまだ納得がいった。
でも本音を言うならば_
ほんとうは怖くて堪らない
この世界に違和感を感じ始めた日から、
事故の記憶を思い出してから、
同級生や先輩に嫌われている理由を知ってから、
吐きたいくらい不味い呪霊を食べてから、
記憶を思い出し、経験していくごとに全てが現実だと改めて痛感させられ
怖かった。
なんて言ったって私は普通の高校生だったのだから、
漫画と現実では話が違う。
寝ていれば、あの事故の感触が夢に現れ魘される。
ずっと不眠続きだった毎日。
そうして私は、頭で状況を理解してても心と身体、ともにゆっくり擦り減っていった。
『ごめんなさ__っい。も…わからなっ』
シルエットの歪んだ彼すらまともに見れず、いつの間にか私は背けるかのように下を向いていた。
唇を噛み締め、掌に食い込む爪の感覚。
痛みがだんだんとなくなっていくのを感じながら、
嗚呼、私は思っていたより弱いのかもしれない。
なんて虚な頭で考えた。
すると突然目の前に影が差す。
顔を上げた瞬間、その影は私に覆いかぶさっていた。
『なな…み、くん?』
「一体_______貴方は誰なんですか?」
そう優しく問いかける彼は震える手で私を抱き締めた。
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ミルクティー - 直哉くんさいこー (4月6日 11時) (レス) @page19 id: 12753137d6 (このIDを非表示/違反報告)
むーこ - 続きが気になりすぎる。。。!夢主ちゃんにはよ幸せになって欲しい!主様、更新まってます(*'▽'*) (2月11日 17時) (レス) @page18 id: dea07b8d55 (このIDを非表示/違反報告)
夜 - うぎゃ!直哉君めっちゃいい!この修羅場好き!ごじょうどうでるか気になって仕方ない! (2月9日 23時) (レス) @page18 id: e366ea730f (このIDを非表示/違反報告)
ゆずな - この作品めっちゃ好きです!続き待ってます( *´꒳`* ) (1月23日 21時) (レス) @page17 id: f39121074c (このIDを非表示/違反報告)
もちゃちゃ(プロフ) - 夏斗さん、夜さんコメント有難うございます‼︎とても励みになります🥹❤️🔥 (1月20日 22時) (レス) id: c9a30c4dbc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:もちゃちゃ | 作成日時:2023年8月31日 9時