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穴が開きそうな程、彼は瞬きもせず私を見つめている。
今すぐ彼の問い掛けに答えなければ何をされるか分らない。
それでも直哉くんとの仮婚約を破棄するために逃げたなんて口が裂けても言えなかった。
そのとき突然首筋に痛みが走り、顔がぐにゃりと歪む。
『やっ…痛い』
「ほな質問に早う答えなな?」
先輩たちの前なのに直哉くんは口付けを止める様子がなく、ただひたすら私にキスを落とした。
じわりと滲む空気の先には表情の見えない先輩たち。
途端に恥ずかしくなり、私は彼の肩に顔を
直哉くんは何を感じ取ったのか、次の瞬間首筋にがぶりと噛み付いた。
『いぅっ……やめ、て』
「じゃあAちゃん。 早う答えてや」
威圧的な雰囲気から一変し、か細い声で私に話しかける彼は昔の脆かったときのようだ。
そして小さな吐息と生暖かい舌先が傷痕をくすぐる。
「何で…なんで逃げたん?」
『だから、っぁ。べつに逃げてな「俺嘘好かんのやけど」…』
言い掛けた言葉を甘ったるい声で遮り、分厚くて硬い掌が頬を包む。
顔なんて背けられない。
本能的に背くことを拒むくらい、彼の目は私を離さんとばかりに爛々と輝いている。
そして、体を震わせながら視線すら離せられない私にやっと満足した彼は優しく微笑んだ。
「俺のことそないな健気に見つめてええ子やなぁ」
彼が可愛がるときすり、と頬を撫でる癖は相変わらず変わっていない。
昔はこの仕草にいちいち心が甘く蕩けそうになっていたのに、
今はただ離れて一人になりたかった。
けれど、昔のままの暖かい温もりに嬉しさを感じているのも確かで…
段々とゆっくり溶けていく意識は彼に身を任せる事しか思い付かない。
その様子に気付いた直哉くんはうっそりと微笑んで私に囁いた。
「ふふふ、俺に身を任せて可愛らしいなぁ。すぐにその血だらけの体綺麗にしたるさかいもう少し待っとってや」
セーラーに染み付いた赤黒い血でさえ彼は愛おしそうに触れる。
嗚呼、気持ち悪い。彼と離れたい。
「人の婚約者にいつまで手ぇ出してんだよ?」
気分の悪さを感じた次の瞬間、静かな怒りに満ちた声が聞こえ、私の視界は真っ青な瞳で埋め尽くされていた。
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ミルクティー - 直哉くんさいこー (4月6日 11時) (レス) @page19 id: 12753137d6 (このIDを非表示/違反報告)
むーこ - 続きが気になりすぎる。。。!夢主ちゃんにはよ幸せになって欲しい!主様、更新まってます(*'▽'*) (2月11日 17時) (レス) @page18 id: dea07b8d55 (このIDを非表示/違反報告)
夜 - うぎゃ!直哉君めっちゃいい!この修羅場好き!ごじょうどうでるか気になって仕方ない! (2月9日 23時) (レス) @page18 id: e366ea730f (このIDを非表示/違反報告)
ゆずな - この作品めっちゃ好きです!続き待ってます( *´꒳`* ) (1月23日 21時) (レス) @page17 id: f39121074c (このIDを非表示/違反報告)
もちゃちゃ(プロフ) - 夏斗さん、夜さんコメント有難うございます‼︎とても励みになります🥹❤️🔥 (1月20日 22時) (レス) id: c9a30c4dbc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:もちゃちゃ | 作成日時:2023年8月31日 9時