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『直哉くんって性格悪いよね』







しこりのような不安が確信に変わったのは、十四歳。








ある雨の日だった。








「なんなん、いきなり」








白檀のお香と水で湿った土の匂いが混じる大きな床の間、








私は柱にもたれ、彼は三色団子を片手に寝そべっている。









『直哉くんがこわい』









それを聞いた直哉は口をもぐもぐと動かしつつ、小首を傾げた。








ふと、口にした疑問が彼の中で咀嚼され飲み込まれる。








その様子を見た私はなぜか心がざわつき、気付けば朦朧とした意識を中庭に向けていた。








「なぁ」









『ひゃ』









耳に温かい空気が触れ、突然声が響く。









「俺の何がAちゃんを不安にさせてるん?」








『女の子に酷いことしてるの分かってる?』








「あんなぁ、三歩後ろを歩かれへん女は背中刺されて死んだらええ毎回言うとるやろ。それの何がダメなん」








即答した彼に思わず振り返れば、澄み切った瞳はさも不思議そうに丸くなっていた。








そう、彼は何も可笑しいなんて思っていないのだ。








分かっていたことなのに、改めて鈍器で殴られたかのように頭が痛む。








それと同時に、お姉ちゃんと私を呼び慕ってくれるあの子たちの泣き顔が頭の片隅で弾けた。








『じゃあ、なんで「Aちゃんを虐めへんかって?」…』








曇天を映す瞳がぎらりと光った。








「Aちゃんはな__俺の女神、俺に臆することなく微笑んで触れられる唯一の存在なんや」







「だから傷つけることなんてせーへん。術式だって天与呪縛だってもっとる。あんな無能女たちとは違う特別な存在や」







「一生離すつもりなんてあらへん。俺のお嫁さんになって一生仲良う過ごさなあかん」








「なあ、なんでそんな震えてるん?結局Aちゃんも離れていくんか?こないな愛してるのに、こないな好きやのに」









彼の震え声に俯いていた顔を上げると、彼は一筋の涙を流していた。








なんて残酷だろう








屑なのに、反面脆くて弱い___差別主義者。








私はそんな彼の弱さでもあり、罠でもある大きな虚無を知ってしまった。








だからその代償に私は執着という名の愛を与えられたのだ。












『離れない…から、泣かないで直哉くん』











こうして私たちの関係はじわじわとゆっくり、歪な物になっていった。

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ミルクティー - 直哉くんさいこー (4月6日 11時) (レス) @page19 id: 12753137d6 (このIDを非表示/違反報告)
むーこ - 続きが気になりすぎる。。。!夢主ちゃんにはよ幸せになって欲しい!主様、更新まってます(*'▽'*) (2月11日 17時) (レス) @page18 id: dea07b8d55 (このIDを非表示/違反報告)
- うぎゃ!直哉君めっちゃいい!この修羅場好き!ごじょうどうでるか気になって仕方ない! (2月9日 23時) (レス) @page18 id: e366ea730f (このIDを非表示/違反報告)
ゆずな - この作品めっちゃ好きです!続き待ってます( *´꒳`* ) (1月23日 21時) (レス) @page17 id: f39121074c (このIDを非表示/違反報告)
もちゃちゃ(プロフ) - 夏斗さん、夜さんコメント有難うございます‼︎とても励みになります🥹❤️‍🔥 (1月20日 22時) (レス) id: c9a30c4dbc (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:もちゃちゃ | 作成日時:2023年8月31日 9時

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