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『ごじょ…さ』
「……もう悟って呼んでくれないわけ?」
『ひっ…』
「顔背けんな…答えろよ」
狭い呪具庫に響く彼の冷たい声。
首筋に生温かい何かが触れ、ゆっくりと伝う。
『おねがい、しま…すやめて』
どんなに声をかけても彼はうんとも反応せず私に絡みついた。
押し返そうとすれば両手首を壁に縫いまとめられ、
身動きを取ろうとすれば全身で覆いかぶされる。
段々ととろけていく意識がますます五感を鈍らせた。
「お前は俺だけのだよ…A」
『違う…ちがうの』
「何も違わねえ」
ぼやける意識の中、五条さんの青い瞳が一際輝いて見える。
ああ、なんでこうなったんだっけ
彼の匂いがより一層深まったとき、そんな疑問が頭を掠めて私は意識を手放した。
____数十分前、保健室にて
腕を組み、扉に頭を預けて滑稽そうに眺めている金髪男。
『なお…やくん?』
「せや、愛しの婚約者さんやで」
にぱーと効果音がつきそうなくらい胡散臭い笑みを浮かべた彼は…
いわゆる幼馴染であり、幼い頃の初恋相手でもある禪院直哉。
そして何より、私が記憶を失う前…
東京校に逃げなければならない原因を作った男でもある。
「見ないうちにえらい別嬪さんになったやないか、なぁA?」
『…』
___
一目惚れ
その言葉が本当だと知ったのは5歳の時、つまり禪院家に初めて挨拶しに行ったときだった。
黒くてサラサラの髪の毛、吊り上がった狐みたいな目…
薄い唇は何を考えているのか、怪しげに弧を描いている。
そして何より星屑のカケラを集めた金色の瞳に私は一瞬で目を奪われた。
『あなたの…なまえは?』
「おぼえとけちび、俺は次期ぜんいん家とうしゅ禪院直哉や」
『じゃあなおやくんってよんでもいーい?』
「べつに…好きに呼べばええやん」
『!…うん』
男尊女卑で生意気で、いつもお付きの女中さんを不安がらせていたくそがき。
そして、かっこいいというだけで惚れてしまった面食いの私。
子供たちのちっぽけな関係だった。
だから彼の小さな気持ちが愛となり、
やがて執着になるなんてこの時は思いもしなかったのである。
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ミルクティー - 直哉くんさいこー (4月6日 11時) (レス) @page19 id: 12753137d6 (このIDを非表示/違反報告)
むーこ - 続きが気になりすぎる。。。!夢主ちゃんにはよ幸せになって欲しい!主様、更新まってます(*'▽'*) (2月11日 17時) (レス) @page18 id: dea07b8d55 (このIDを非表示/違反報告)
夜 - うぎゃ!直哉君めっちゃいい!この修羅場好き!ごじょうどうでるか気になって仕方ない! (2月9日 23時) (レス) @page18 id: e366ea730f (このIDを非表示/違反報告)
ゆずな - この作品めっちゃ好きです!続き待ってます( *´꒳`* ) (1月23日 21時) (レス) @page17 id: f39121074c (このIDを非表示/違反報告)
もちゃちゃ(プロフ) - 夏斗さん、夜さんコメント有難うございます‼︎とても励みになります🥹❤️🔥 (1月20日 22時) (レス) id: c9a30c4dbc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:もちゃちゃ | 作成日時:2023年8月31日 9時