十一輪 ページ11
「それで?何かあったの?」
荷物を自分の部屋に置き、一服ついた後、弟がやっとかと言わんばかりの顔で尋ねてきた。
『何かあったから来たんだよ。
沖矢昴っていう人と降谷零の関係を調べてほしい』
「沖矢昴?」
なんでそんな人を?なんて顔をして尋ねてくる弟に、少しため息をつく。
探偵なら、少しは考えろ。推理をしろ。
……こんなんだけど、一応 日本のホームズと呼ばれるほどの実力者。こんなんだけど……。
『東都大学院工学部所属の生徒さん。工藤ファミリーとなんらかの関係を持ち、今は不在の高校生探偵工藤新一の家に居候中。糸目でハイネックのある服を好んで着る男。
……なのに、なぜか降谷さんが警戒するほど』
「なんだ、そこまでわかってんなら。なんで……?」
『誰にも話したことがないのに、知ってたんだよ。
……っ、ヒロくんのこと』
「……!?景光兄さんのことを!?」
『たぶん、ヒロくんの死に関係があるんじゃないかって……思うんだ』
「…………わかった。その依頼、承りました」
スマホを握りしめ、かたかたと震えているであろう私の肩を抱いて、落ち着かせてくれる弟。
嗚呼、ヒロくん……そっくりだなぁ。なだめ方が彼に似ていて、ものすごくほっとする。
「姉ちゃん、降谷さんからの仕事はどうするの?」
しばらく、ここに泊まるんでしょ?大学も休みたそうだし?
とすべて見透かされている。……こんなところで探偵脳使うなよ。
『いていいなら。……しばらく、お休みしてたショーでもやりに海外に飛ぼうかな?』
「それもいいんじゃねぇの?
最近、姉ちゃん根詰めすぎだったと思うよ?」
『そう言ってくれるなら、そうしようかなぁ??』
「降谷さんには俺から連絡しておくよ。大学とか高校には自分で連絡入れるんだぞ?」
『はぁ〜い』
ソファを借りてゴロゴロと寝転ぶ。……なんだか、懐かしい。ヒロくんともこんな風に家で一緒にいたなぁ。
家から持ってきていたパソコンを取り出し、大学にメールと高校にファックスを送る。
これで明日からはどうにかなるし、海外便でもとっておこうかな?それとも、寺井さんのとこにでもいこうかな?
ふむふむと一人で悩んでいる間に何やら、惺が電話をしていたよう。ちょっと耳を澄ませていれば、スピーカーでもないのに、鼓膜が破れるほどの大声が聞こえてきた。
《いいから!とりあえず代われと言ってるんだ!》
「いや、いくら降谷さんの頼みでもそれはっ」
……苦労してんなぁ、弟も。
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