白夜叉達の救世主01 ページ17
「ありがとう」
刀を手に傍に来た俺に対し恩師である先生こと吉田松陽はただ一言、その言葉を残した。
救いも何もありゃしねえ、どちらか一方を最悪な形で失うしかない選択肢を強制的に突き出された俺は、死ぬ定めをあっさり受け入れてしまった先生の背中に、己の無力さを痛感しながら視界が滲むも漸く意を決し、刀を翳そうとした。
そんな時だ。
「おい少年よ」
この声は突如として俺の元に降り注いできた。
「お前さん、手ェかける相手間違えちゃいねェかい」
最悪な状況下を救ってくれる救世主か、事態を更に悪化させる悪魔の声かも判別つかぬまま、気付けは俺達の前に、全身を黒一色に染めたローブにフードで顔を覆い隠した奴が立っている。
「――――――は、?」
俺に向けたであろう言葉はただ都合の良い幻聴かと顔を上げれば、滲んだ視界でも分かる黒い人の形をした何か。
本当に突然すぎた奴の登場に気が動転してしまった俺はそいつの姿があまりにも先生の魂を狩りにきた死神にしか見えず、本能的に感じた恐怖から手にしていた刀をそのまま奴に向けると、
「なっ…!?何者だ貴様は…!!いったいどこから入ってきた……!?」
つい先程俺に救いのねえ選択肢を突き出した天導衆の動揺に不思議と心が軽くなると共に、奴が俺の幻覚でも死神でもない、ちゃんと実在し認識されているという事実に少し安堵する。
改めてその存在を確認しようと滲んだ眼を乱暴に拭えば、今度はハッキリと顔は不明のままだが黒いローブを着た奴が微動だにしない立ち振舞いで、俺と先生の前に佇むのが分かる。
「……つか、いつの間に……」
「……貴方は…一体…?」
奴の登場に終始驚きを隠せない俺達だが、そんな事はお構い無しに奴は天導衆の長の問いや先生の問いがしかと耳に届いていたのか、腕を組み首を傾げては考えるような素振りを醸す。
「いやあ、別に」
「「「は、?」」」
あれだけ大物感のある意味深な登場をしたにも関わらずやっとの事で発された奴の第一声は、何ともすっとぼけたもので、思わずこの場に居た全員の声がシンクロする。
「っ、貴様ふざけているのか!我々を誰だと心得て…!」
「あー、それぐらいは知ってらあ。おたくら、天導衆だろ」
「!!」
中身のねえ拍子抜けした発言に流石の長も憤怒するもこいつらが天導衆である事を理解したうえで取る飄々とした態度に警戒が強まる。
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ハニー - アッこれすき。続き楽しみ過ぎます( ˙-˙ ) (2018年12月4日 11時) (レス) id: f040ea1a18 (このIDを非表示/違反報告)
麗威(プロフ) - 主人公の無敵さ、しかもギャグのセンスもあってある意味最強ですね! (2018年11月22日 18時) (レス) id: ad644a3a0a (このIDを非表示/違反報告)
ねゃむ^._.^(プロフ) - 早く物語の続きが見たいです!! (2018年9月9日 0時) (レス) id: 6a8d27ee1a (このIDを非表示/違反報告)
無気力人間に等しい(プロフ) - ねゃむ^._.^さん» コメントありがとうございます!できるだけ頑張ります! (2018年9月2日 2時) (レス) id: 2e4da08bd8 (このIDを非表示/違反報告)
ねゃむ^._.^(プロフ) - とても面白いです!!ww早く次が見たいので更新お願いします!! (2018年9月2日 1時) (レス) id: 6a8d27ee1a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:無気力人間に等しい | 作成日時:2017年7月6日 1時