Zionの花束を17 (ページ13)

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元気で6 ページ13

マスターが少し遅れてやってきて、人も揃ったところで、労いの宴が始まった。
お茶会、といっても、小さな子どもがいるため、改まったことはせず、軽食を食べながら、談笑するというとても和やかな雰囲気の会になる。特に、眼鏡の孫が女性職員たちから注目の的のようで、美味しいジュースやらお菓子やらを見繕われていた。
「おじいさまとおばあさまは、りこんしたとききました」
「ぶっ」
「げほ、ごほ」
「ん、んー」
噴き出したのは顎髭。眼鏡と婦人は咳き込んだり咳払いをしたりしていた。
そんな様子など気にもせず、女の子は悲しそうに二人に問う。
「お父さんとお母さんはとっても仲良しです。とっても仲良しだからけっこんして、とっても仲良しだからわたしがうまれたとききました。おじいさまとおばあさまは仲良しじゃなかったんですか?」
子どもながらに鋭い問いかけである。眼鏡と婦人は渋面を浮かべ、説明しづらそうにしている。素朴な疑問を抱く彼女の両親は止めようとしない。
顎髭は腹を抱えてひとしきり笑うと、女の子に寄り添い、渋面の二人を示した。
「よぉく見てごらん。君のおじいさまとおばあさまは、今、とっても難しい顔をしてらっしゃるでしょう?」
「聞いてはいけないことだったでしょうか?」
まあ、軽々聞いていいことではなかったかもしれないが、年端もいかぬ子どもの疑問である。叱りつけるほどのことではない。
「確かに、答えるのが難しい質問だったかもしれないけど、二人共、おんなじ顔をしているように見えないかな?」
「!!確かに」
「おんなじ顔ができるくらい、二人はとっても仲良しなんだよ」
「よかったあ!!」
花の咲いたように笑う無邪気な女の子は、それで納得してくれたようで、問いに答えられなかったおじいさまとおばあさまが胸を撫で下ろす。期せずして、同じ仕草となり、やっぱり仲良し!!と尚のこと孫を喜ばせるのであった。
顎髭が眼鏡の隣に戻ると、眼鏡からは様々な味のクッキー、婦人からはハーブティーをいただいた。
「お前を招待してよかった」
「私も同感です。助かりました」
「大袈裟だなあ」
親切すら不器用な二人はやはり似た者同士で、たぶんだからこそ別れてしまったのだろう、というのは、あの女の子が知らなくてもいい話である。
大人っていうのは難しいなあ、と顎髭は他人事に溜め息を吐く。ハーブティーの香りが胸の中を透かしてくれるのが心地よいので、悪くはなかった。