氷の女王2 ページ17
笑っているのに笑っていないように見える。
簡単に言うなら、そんな風に見えた。
笑っていないのなら何なのだ、と言われると回答に困ってしまうが。
「どうなさいました?」
歌手がこちらに疑問を投げ掛けてきたので、いや、と眼鏡はグラスをくい、と煽り、誤魔化した。
きっと気のせいだ。考えすぎだ。眼鏡はそう思うことにした。
それに顎髭はいつもだが、楽しそうに飲んでいるところに水を射すのもいけない。眼鏡はウイスキーを飲み干し、おかわりをマスターに頼んだ。
「いつもウイスキーばかりで飽きないのかい?」
「好きな酒なんだからよかろう」
ワイングラスをゆらゆらと弄ぶ顎髭といつも通りの会話。それを見て歌手はあらあら、と笑う。
「いつも思っていましたが、お二人は仲がよろしいんですのね」
「まあ、付き合いが長いからねぇ」
すると、ふと思いついたように顎髭が尋ねる。
「君にはそういう友人とかいないのかね?」
空気が凍りついたような気がした。顎髭の言い方は確かに不躾だったが、何もここまで、というほどに。
そこで彼女は笑って答えた。
「私の歌を聞いてくれれば、皆さんお友達のようなものですわ」
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作者名:九JACK | 作成日時:2019年10月25日 13時