Zionの花束を 12 (ページ25)

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花ひらり8 ページ25

率直に問われ、経営者を前にどきりとする小肥り。
けれど、酒でいくらか口が軽くなり、顎髭や歌手の言葉で和みきった雰囲気の中、小肥りの躊躇いの枷は程よく緩んでいた。
「とても楽しい体験をさせていただきました」
別に悪口を言うのではないからいいだろう、と小肥りは語り出す。
「僕は自分のやること成すことに自信がなくて、他者から評価されても聞き間違いや見間違い、思い上がりなんじゃないかって、素直に受け止められないんです。自分の自信に見合ってないから」
それはとても普通のことだった。普通のことだからこそ、この程度のことを悩みとするのはいかがなものか、と考えていた。
その思考はぐるぐるぐるぐる、ハツカネズミのように頭の中を回って、自分がやろうとしていることを小難しくしていた。
それに気づいた。気づかせてもらった。
それだけで、今日という夜に価値はあるのだろう。
「すぐに自信を持てというのは無理ですが……いくらか前向きになれそうな気分です」
「そりゃあいい」
顎髭が小肥りの頭をわしゃわしゃと撫でた。
「酒は前向きになるために飲むものさ。悪酔いはいけないけどねえ」
「お前がそれを言うか。あと、俺の台詞を盗るな」
「おっと失敬、失敬」
上司の意外な一面も見られたし、今日はいい日なのかもしれない。
グラスの水面に浮かべた花びらが、ゆらりと時の経過を湖面に映した。

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