Zionの花束を 5 (ページ18)

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流転する過程1 ページ18

家に帰ると、やはり誰も起きていない。眼鏡は今日もZionで散々飲んだが、家で晩酌をすることにした。
家には洋酒がいくつもある。好きなのだ。麦酒はない。スパークリングワインなどは好きだが、麦酒の味とあの泡がどうも眼鏡は好きになれないのだ。
幼少の折、父が久方ぶりの家族旅行に連れていってくれたとき、蟹が泡を吹いているのを目撃した。初めての目撃だったため、リアクションこそ薄いものの眼鏡の少年には衝撃的な出来事だった。
蟹が泡を吹いて死んでいるのだ、と母に教えられた。以来、泡=死というイメージが眼鏡の中に刷り込まれてしまい、泡というものに恐れを抱くようになってしまった。
炭酸の水中を上る泡は大丈夫なのだが、ある程度溜まった泡が苦手なのだ。故に、本格派のコーヒーの泡も苦手で、コーヒーは専ら缶に限る。
変わっているのは重々承知だが、その嗜好は変えられない。

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