Zionの花束を 5 (ページ17)

今日:1 hit、昨日:5 hit、合計:665 hit

一からの出直し9 ページ17

キーボードはベースに対し、「いいことをしてあげている」という上から目線のスタンスだ。今も昔も変わらない。だが、まだ考えが稚拙だった頃はいいとしよう。二人共、大人と呼べる年になった。
そうなったとき、上から目線で自己中心的で自己満足に過ぎないキーボードの考え方をベースは受け入れ続けられるか、となると話は違う。
「とはいえ、ベースは君を見捨てたわけじゃあるまい。そんなに薄情なやつなら、昨日までここで演奏を続ける必要などなかった」
つまり、ベースは、
「待っていたんだよ、彼は。バンドをやりたい自分を真っ先にに導いてくれた君を」
顎髭が言うと、目を見開くキーボード。そんな意味があったなんて、と呟く辺り、昨日までベースの演奏を聞くなり何なりしていたのだろう。
がたん、とキーボードは立ち上がった。それから、僕、行かなくちゃ、と言って、店から出ていった。
カクテルの湖面が揺らめく。眼鏡は名前を思い出せなかったが、カクテル言葉を記憶の隅から引っ張り出した。
長いお別れ、と、希望、だったか。

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