Zionの花束を 5 (ページ13)

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一からの出直し5 ページ13

顎髭の問いにびくん、と震えるキーボード。顎髭にしては感情の入っていない物言いだが、怯えるほどでもないだろう、と眼鏡は断じる。
……まあ、今日まで演奏を放り投げて逃げ出したという負い目があるのだろう、と見た。
「あいつは、いないんですね」
「ベースくんなら夢を求めてストリートに戻ったよ。相棒が壊れたから、大丈夫か不安だねぇ」
相棒、という言葉に僅かに反応するキーボード。今まで放っておいたのに、自分が相棒だとまだ思っているのだろうか、と眼鏡は幾分か冷ややかな視線を注ぎながら付け足す。
「ベースギターの弦が弾けたんだよ。弦を変えるか、買い替えるかしなきゃならんだろう」
「まあ、その分の足しになればいいねぇ、僕らの飲み代」
なんだ、人情味のあることを言うじゃないか、と眼鏡が嘯くと、顎髭が、君は僕を何だと思っているんだい、と苦笑した。
「そ……か」
キーボードの掠れた声が、ざわめきの随に聞こえた。

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