今日:4 hit、昨日:0 hit、合計:2,343 hit
小｜中｜大
奇妙な夜2 ページ10
眼鏡が帰宅する。ただいま、などとは言わない。あと一時間もすれば草木も眠る頃合いだ。妻も倅も起きていないことだろう。
いつも行きつけのバーで飲んでくることを知っている妻は、倅共々、さっさと夕食を食べ、寝てしまう。起こさないようにするのが、自分勝手を自覚する眼鏡の配慮だった。
たった一人の食卓で、貯蔵庫に仕舞っていたウォッカの瓶を開ける。それを水で割り、グラスに注いで、一人で晩酌をした。
夜の月を見ながら、私室で酒を飲むのも好きだった。今宵の月は三日月だろうか。細い。
やはり静かに飲むのはいい。妻も眼鏡の堅物の気質を理解してくれている。眼鏡はそう思いたいところだが、夫婦仲はあまりよくない。
まあ、毎日帰りの遅い亭主に呆れているのかもしれないが。
眼鏡は口下手だ。妻にありがとうの一つもついぞ言ってやれていない。
ふと、あの顎髭ならどうするのだろうか、なんて考えてから、ふっ、と笑った。
あいつなら、なんでも笑って流してしまいそうだ、と思って。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 2人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：九JACK | 作成日時：2019年6月13日 1時
