towaco『鬼と狐』パロディ作品 ページ7
私は、じゃんけんが弱かった。
給食で余ったプリンも、憧れだった飼育委員の肩書きも、何も手に入らなかった。
皆のランドセルを運ぶのとか、鬼ごっこの鬼役はすぐに手に入ったけれど、そんなものを欲しがる物好きなんてどこにもいない。
ほら、今日も最初から鬼だ。
くすくす笑いがやがて途絶えていって、境内はシインと静まり返る。背の高い杉の木が、ざわざわと内緒話をする。
いつも皆のことを見つけられなくて、時間だけが刻々と過ぎていって、そうして私はいつも泣き出してしまう。
そうすると、皆がシラけた顔で隠れていた場所から出てくる。
隠れんぼなんて大っ嫌い。
どうせそうなるって、わかってるんだもの。
けれども、今日はくすくす笑いすらも聞こえない。鳥居の前に投げ出されていたはずのランドセルは、目に慣れた私の緋色だけ。他の赤色も、黒も、洒落た水色も無くなっていた。
皆帰っちゃったのかな。
そう思うと、額がじわじわ温まってきて、鳩尾は冷たい石を詰め込まれたみたいに苦しくなる。
すると、後ろから声を掛けられた。
……_____おや、お嬢さん。こんなところで何してはるんですか？
賽銭箱の横の階段に、知らない男の子が腰かけていた。
青い着物に、緋くて長いマフラーみたいなモノを着けていて、頭には狐のお面。同い年か、少し年上だろうか。ふわり、と私の頬を風が撫でていく。
「…隠れんぼ。皆、私を置いて、どっか行っちゃったの」
…皆と一緒にいようとするから、置いてかれるんですよ。私とだけ一緒にいればええ。おいで。
薄闇で満たされていく境内に、ざわり、と一際大きな風が吹く。彼は、右手に提灯を掲げて、左手で私の手を優しく引いて、歩き始めた。ぽっ、と提灯が勝手に明るくなって、道を照らした。
ざわざわ、ざわざわ
どこか、遠く。
遠くで、誰がが誰かを読んでいる気がする。
誰を呼んでいるんだろう。
……どうしたんです？
「誰がが、誰かを呼んでるから」
………、そうですねぇ。
「誰だろうね？早く行けばいいのにね」
…えぇ、ほんまに。
りぃん、と、彼の手首につけられた鈴の音が鳴らされる。その反響の中に、誰かの声は掻き消えてしまった。
そうして、私は、彼の手に引かれるままに、いつもより暗い神社の裏手の階段を登って行った。
鬼と狐
(Aちゃーん、どこー？)
(先に帰っちゃったのかなぁ)
(でもランドセルあるよねぇ。どこ行ったんだろ)
+++++++
『歌う百物語』より
p-p『無彩色に融ける』パロディ作品→←セピア『Silent』狂愛
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やつがれ先輩(プロフ) - �擦気�» 初めまして。コメントありがとうございます。そう言っていただけてとても嬉しいです！もっと楽しめる作品になるように精進します…。 (2017年8月25日 0時) (
レス) id: f68a99e668 (このIDを非表示/違反報告)
��(プロフ) - 貴方の文章から滲み出る雰囲気とか、独特の世界と言いますか、なんと言いますかすごい好きです。ひっそりと見てます……！ (2017年8月15日 0時) (レス) id: 97e51543ee (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：やつがれ先輩 | 作成日時：2015年12月20日 1時
