湯毛『いっぱい食べる君が好き』狂愛 ページ5
夜。なんとも言えないいい香りに誘われて、私は今へと向かう。
「…うわ、これ前に私が言ったやつ？」
「おう、前に美味かったって言うてたやん」
せやから作ってみた。
彼が、ニッと明るい笑顔を浮かべる。
卓の上に出されているのは、以前私が有名店の長い行列に並んで、やっと食べれたハンバーグ。美味しかったんだよ、と彼に伝えてから、まだ一週間も経っていなかった。
「食べていい？」
「当たり前やん、冷めないうちに食って」
きらきらしたナイフを刺し入れると、肉汁がじゅわっと溢れてくる。
口に運ぶと、ジューシーな肉とデミグラスの、塩気が抑えられた優しい味わいが広がる。
私好みの味に作り変えられたそれが、不味いはずがなくて。
「お店のより全然美味しいよ！」
「おー、そうか。そりゃあよかったわ」
_____彼は料理が上手い。
同棲を始めるときに快く料理番を引き受けてくれた彼には、頭が下がりっぱなしだ。
出来合いのもので食事を済ませていたころが懐かしい。
こんがり焼かれた付け合せのベイクドポテトを切り分ける。
「……ねえ、湯毛」
「何？」
「いつもありがとう」
彼が顔を上げる。
「え、急にどしたん？」
「いつもご飯作ってくれるから。そのお礼言っとこうかなって」
湯毛と一緒に住み始めて半年。
彼が三食きっちり提供してくれる、栄養バランスも彩りも完璧な食事は、私のことを変えたと思う。
あれだけ悩まされた肌荒れも枝毛も、唇の乾燥すらなくなった。
毎日体調は良いし、朝もすっきり起きられる。
「湯毛のお陰だよ」
そう言うと、彼は照れたように笑った。
「…そっか。…いやな、俺も感謝してんで。Aはいつも俺の飯旨そうに食ってくれるから作り甲斐あるし、嬉しいわ。ありがとな」
彼はそう言って、私の頭を撫でてくれた。
「んふふ」
「ん。ほら、さっさと食わんと冷めんで」
ああ、私はなんて幸せなんだろう。
ハンバーグをまた一口。
美味しい。
「美味しいなあ」
思わず洩れた呟き。
何となく、湯毛が笑っている気がした。
いっぱい食べる君が好き
(もう逃がさない)
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やつがれ先輩(プロフ) - �擦気�» 初めまして。コメントありがとうございます。そう言っていただけてとても嬉しいです！もっと楽しめる作品になるように精進します…。 (2017年8月25日 0時) (
レス) id: f68a99e668 (このIDを非表示/違反報告)
��(プロフ) - 貴方の文章から滲み出る雰囲気とか、独特の世界と言いますか、なんと言いますかすごい好きです。ひっそりと見てます……！ (2017年8月15日 0時) (レス) id: 97e51543ee (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：やつがれ先輩 | 作成日時：2015年12月20日 1時
