湯毛『黄泉竈食』狂愛 ページ28
『いっぱい食べる君が好き』の湯毛目線です。
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昔から料理をすることが好きだった。
Aと同棲する際、すぐに料理番をかって出た。それから、Aはいつも俺の料理を美味しそうに食べてくれる。
｢……んー｣
フライパンの中でくつくつと煮えるデミグラスソースを、スプーンで掬ってぺろりと舐める。
…味の濃さ良し。とろみも完璧。ただ、コクと深みが足りない。悪くはないが、これではAの口に合わないだろう。
｢……とりあえずバター足すか｣
ソースの中に溶けていくバター。
このソースさえ作り終えてしまえば、とりあえず一区切りつく。Aが旅先から戻るまで、あと一日。ここまで長かった。
｢…でも時間足らへんわぁ｣
このハンバーグは、そもそも二日前、Aが『美味しかったよ！』なんて写真付きで教えてくれたものだ。その日と昨日とですぐ食べに行ってきたが、とても美味しかった。
でも、それが。
あのどろりとした濃厚な美味しい美味しいデミグラスソースが、
俺の脳髄を焼くような焦燥を募らせたから。
何度目かも忘れた味見。
口内に広がる濃厚なデミグラスソース。
舌の根に深く刻み付けたあの味。
…あの味を超えるものでなければ。
｢………まっず｣
シンクの中にソースをどぼどぼと捨てる。
｢…A｣
大好きなあの笑顔。
彼女のことがたまらなく好きだった。
だからAのためにずっと料理を作ってきた。
俺の料理が。
Aの長い髪を、
ニキビひとつない白い肌を、
程よくついた薄い筋肉を、
血の色であかく艷めく唇を、
…俺の料理が作ったというのに。
俺の作ったものだけが、彼女を彩る細胞の全てを創ってきたのに。
それなのに、
俺の可愛いAは、そとのクソくだらない餌なんかに浮気している。
あぁ、可愛いAが汚される。
この炎症のような興奮と甘美が汚される。
彼女をきれいにするための食事をまた作らなければ。
新しいソースの仕込みのために香味野菜を刻む。どろりとしたバターを削る。気味悪いくらい真っ赤なワインを開ける。硬い牛骨を力ずくで叩き折る。
｢そとのもんなんて、食わんでええやんな｣
何よりも美味く、愛情をたっぷり込めた食事があるから。
胃袋ごとお前を縛りつけておける食事があるから。
「早よ帰ってこーへんかなぁ…」
フライパンの中をかき混ぜる。
彼女は今日も気づかない。
黄泉竈食
(胃もたれするような愛を)
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やつがれ先輩(プロフ) - �擦気�» 初めまして。コメントありがとうございます。そう言っていただけてとても嬉しいです！もっと楽しめる作品になるように精進します…。 (2017年8月25日 0時) (
レス) id: f68a99e668 (このIDを非表示/違反報告)
��(プロフ) - 貴方の文章から滲み出る雰囲気とか、独特の世界と言いますか、なんと言いますかすごい好きです。ひっそりと見てます……！ (2017年8月15日 0時) (レス) id: 97e51543ee (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：やつがれ先輩 | 作成日時：2015年12月20日 1時
