あろま『グランギニョル･パラノイア』狂愛？ ページ23
あの日を境に、俺は迷走した。それなりに幸せな人生を適度に謳歌して、予測される日々を淡々と生きていけばいいと思っていた。
そんな乾いた大切な日常を、あの事故が全て持っていってしまったのだ。
「…」
昔のことを思い出す。
噎せ返るようなあの夏の日、幼馴染のAと共に交通事故に巻き込まれた。
蛇行しながら歩道に突っ込んできたトラックを避ける術なんてあるはずも無く、俺達はなんの抵抗も出来ないままに吹っ飛んだ。
赤、青、白。色とりどりの鮮烈な光が俺の目を貫いた。アスファルトに勢いよく叩きつけられて、「痛い」とか「あぁ、これは死んだな」と思う間もなく意識が飛んだ。
しかし、次に目を覚ました時、俺の視界に入ってきたのは病室の天井だった。傍らには泣いている家族や友達がいた。俺は助かったのだ。
「…A」
ほぼ無意識に、掠れた声で名前を呼んだ。
大事な大事な幼馴染。
けれど、俺のベッドに群がっていた人々は不思議そうな顔をして、こう言った。
「Aって、誰？」
――あぁ、その言葉を聞いたあの日から、俺は地獄を生きてきた。幼馴染のいない日々はあまりにも静かで、つまらなくて、どうしようもないほどのイージーモードだったのだ。
そんな徒然は途方もなく長く続いた。今までAと繰り返してきた会話の温度が、脳裏で憎悪に似た何かへと変貌を遂げるほど。
それを理解した時はひどく落胆した。
脳漿の奥に深く刻みつけて、せっかく大事にしてきたものだったから。
幼馴染と過ごす日々だけが、何よりも華やいで見えていたから。
それなのに、脳汁だけはどろどろ溢れて、気の遠くなる程の量の計算で頭が詰まる。
気が狂いそうだった。
冷めたコーヒーに、壁一杯の本棚、山のように書き溜められた研究資料を前に嗤う。
｢お前のせいだからな｣
キーボードを叩く。頭の出来には昔から自信があった。数年をまるまる費やしたこの研究には、人類数世紀分もの価値があるだろう。
けれども、そんな俺をまるごと認めてくれる彼女は、むさくるしい夏の温度に閉じ込められたまま、平行世界に飛ばされたらしい。
同い年なのにバカみたいに子供っぽくて、俺の頭脳を素直に褒めてくれて、あろま、あろま、とひよこみたいについてくる姿が脳裏に浮かんだ。
まだ大丈夫。
「俺はまだ正常だ」
すぐに助けてやるからな。
お前以外を✕✕してでも。
グランギニョル・パラノイア
(あんな空想世界になんてくれてやるものか)
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やつがれ先輩(プロフ) - �擦気�» 初めまして。コメントありがとうございます。そう言っていただけてとても嬉しいです！もっと楽しめる作品になるように精進します…。 (2017年8月25日 0時) (
レス) id: f68a99e668 (このIDを非表示/違反報告)
��(プロフ) - 貴方の文章から滲み出る雰囲気とか、独特の世界と言いますか、なんと言いますかすごい好きです。ひっそりと見てます……！ (2017年8月15日 0時) (レス) id: 97e51543ee (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：やつがれ先輩 | 作成日時：2015年12月20日 1時
