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「あー、荷物…」
教室にお弁当箱を忘れたのを思い出して、図書館から戻る。時刻は五時を少し回った頃。きっくんの部活が終わるまで残りはまだ何分かある。時間に余裕はないし、教室が施錠されたら面倒なので自然と早足になる。
そして、教室の扉を開けようとしたところで、中から笑い声が聞こえた。ほとんど反射的に、その手が引っ込む。
「それな！あいつまじくそウゼェ」
「キモいよなぁ。きっくんの周りウロウロしてて。邪魔だっての」
「つーか、何アレ？彼女？」
「それはねぇだろー。クラス一の根暗チャンだし」
「ほんとマジで死ねよ的な？」
ははははははは！！
裂くような笑い声が、胸の奥で冷たく溜まる。
根暗なのも、金魚の糞なのも、釣り合ってないことも、
自分が一番よく知ってる。
きりきりとお腹が痛くなってくる。惨めさが波のように襲ってきて、目の奥が熱くなる。
視界がじんわり滲んできた時、ぽん、と肩に手を置かれた。
「A、おまたせ」
振り向くと、ギターケースを担いだきっくんが笑っていた。くくった金髪が鮮やかに輝く。その眩しさに思わず目を細めた時、目の淵に溜め込まれたなみだがぽとっと落ちた。
「えっ！？ちょ、どしたの」
「…なんでもない」
こんな情けない姿を見られたくない。固い袖口で、手で、ごしごしと乱暴に目を擦る。大丈夫だという意味を込めて笑ってみせる。
すると、涙を拭っていた手をきっくんに奪われた。ひやりとした、冷たい手だった。
「擦んなって。目腫れるよ」
そう言って、ティッシュで涙を拭いてくれる。晴れた視界の中で、きっくんは困ったような顔をしていた。
「なんで泣いてんの」
「なんでもない。帰ろ」
不可解そうな彼を誘導するように、階段の方へと踵を返す。なるべく顔を見られないように、少し早足で。教室に入る気はとうに失せていた。弁当箱なんて明日持って帰ればいい。明日の朝はコンビニに寄ろうと、ぼんやり思った。
すると、ドアの向こうでまた声がした。
「お前言うねぇー」
「だってさぁ、Aってキショイじゃん？」
「わかるぅー。ずーっと下向いててボソボソ喋ってて、何言ってるかわかんないし」
「つかブスだし？」
「あたしあんな顔だったら首吊るわ」
涙がまた一つ、頬に落ちる感触がした。後ろで、上履きの音が止まる。きっくんが足を止めたのだ。
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やつがれ先輩(プロフ) - �擦気�» 初めまして。コメントありがとうございます。そう言っていただけてとても嬉しいです！もっと楽しめる作品になるように精進します…。 (2017年8月25日 0時) (
レス) id: f68a99e668 (このIDを非表示/違反報告)
��(プロフ) - 貴方の文章から滲み出る雰囲気とか、独特の世界と言いますか、なんと言いますかすごい好きです。ひっそりと見てます……！ (2017年8月15日 0時) (レス) id: 97e51543ee (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：やつがれ先輩 | 作成日時：2015年12月20日 1時
