いつか私のところに戻ってくれば良いだなんて

20話 ページ21

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教師という者も人間でそれなりの感情をもっていることは勿論知っている。恐怖心だとかが邪魔しているんだろうことも理解できる。けれど教師になったのなら子供を1番に守らなくてはならないのだ。生徒という次世代を切り開く若者を守る必要がある。それなのにそれができない。そんな大人は教師じゃない。

そんなこと考えているうちにどんどん男は私へと向かってくる。お前、俺を騙してたんだろぉ？呂律の回ってない舌っ足らずな声で男が泣き叫ぶ。

お前のダチって奴から聞いたよ。俺のこと影では馬鹿にしてたんだってなぁ？あいつは優しい奴でよぉ、お前が騙してんのも教えてくれたし悲しむ俺に慰める薬もくれた、最高な気分だぜぇ。なるほど、盛大な勘違いをしているらしい。何とも迷惑な話だ。まず私に深い仲である友達はいないし、馬鹿にはしてない。呆れていたのと嫌っていただけ。それにそれを口に出したことはない。

話を聞いている限り私の友人を名乗る人物から接触されあらぬ話を吹き込まれた挙句、薬 物類を渡されそれを簡単に信じ込んでこの状況を引き起こした、つまりはそういうことだろう。慰める薬、と男が言った瞬間クラスの連中が騒ぎ出したのにさえ男は気がつかなかった。口ぶりを聞くに相手は女だ。大方ベッドの上で甘い声と共に絆されてしまったのだろう。

なんて惨めな話だ。私はあんなにも大和撫子を盲目に信じてそれに徹していたのに、男は呆気なく小悪魔系のずる賢い女に騙し取られた。人の男を横取りする女狐のような女に。私のしてきたことは無駄だったのだろうか。全てが無意味なことだったように感じる。従順とは時に無力だ。私がこれから何を言ってもきっと普段は何でも言うことを聞くくせに今回は否定するなんて怪しいに決まってる！！と男の単純な脳では変換されてしまう。

毛利蘭がこっちへ来そうだったのを鈴木園子が全力で止める。誰であれ包丁を持つ男の前に大事な友人を立たせたくはないものだ。まぁ私をその大事な友人の部類に分類してくれる子は残念ながらいなかったけど。それは別に良い。私がそれを望んだから。

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