いつか私のところに戻ってくれば良いだなんて

19話 ページ20

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今どこにいる。相変わらず疑問符の足りないメールが届く。彼がいなくてよかった。着信音を消し忘れていたそれに彼が気がついたらスマホごと床に叩きつけて壊されそうだから。家だよ。平然と嘘をつく。理由は自分でも分からないけれど彼にこの場所にいることを知られたくなかった。男の家であられもない姿で放置されていると、教えたくはなかった。だから当然のように嘘を言う。それ以降彼からの返信はなかった。嘘をついたとバレるはずがないのに不安だった。一端の不安が頭の中を駆け巡っていた。

1ヶ月ほどが経ったある日のことだ。食後の授業で眠気が増していた最中の出来事。春日和でまさに春眠暁を覚えずの言葉が相応しい。眠くて眠くて仕方なかった。なんとこの帝丹高校に不審者が現れたらしい。男は東側の階段から3階を目指しているとの放送が入る。不思議なことに東階段から登った先、1番近い3階の教室は私達のクラスだ。

すぐに教師達が慌てて避難させようと指示を出す。だけど遅かった。既に教室に男が足を踏み入れてしまっていた。私の名前を虚ろにブツブツと呟く男。間違いない、見間違えなんかでは無い。彼は10日ほど前に私を抱いたクズ男だ。手には包丁を構えて目は上を向いてひん剥いている。明らかに様子がおかしかった。彼が私の名前を連呼する度私に視線が集まる。クラスメイト全員が私からよそよそしく離れていくのが視界に入った。分かっていた。偶に話す程度の浅い関係の友人など意味がないことぐらい。

彼は元々この学校の卒業生だ。2つ上の先輩でもある。彼がまだ在学中に私と交際を始めたのだ。そんな彼を知る人物はこの中にも多くいる。彼は不良で有名だったし女遊びが激しく悪い噂が絶えなかった。だからビッチの私と付き合った時にはお似合いだと祝福された。

教師達は私を真っ先に避難させなければいけないはずなのに何故だか困ったような瞳でこちらを見るだけ。困っているのはこっちだよ。未だオロオロと揺れる瞳を睨みつけた。しつこいようだが私は大和撫子タイプだ。それは教師の中でも周知の事実。だからびっくりしたように呆けた顔でこちらを見る教師達が何だか面白かったし憎たらしかった。

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