いつか私のところに戻ってくれば良いだなんて

16話 ページ17

・

ニュースを見て呆然としている私にメールが入る。無事で良かった、そんな1文に思わず自然と笑顔になる。こんなの自分がやったと自白しているようなものじゃないか。もうおおよそメールの相手の予想はついてる。でもまだ確信にはしたくないだけ。だって私はアニメであんなにも冷徹で無慈悲だった男に親しみを感じているのだ。ぶっきらぼうで不器用だけど私の話を親身に聞いてくれ、危険から遠ざけてくれるような優しい1面を持つ男だと知ってしまった。守ってくれてありがとう、感謝の意を込めて送る。多分彼は私があれこれ聞いてこないと信頼しているからこうやって素直に会話をしてくれるのだ。だから無事で良かったの返信にどうして爆発することを知ってたの？なんて送る馬鹿な真似はしてはいけない。そうすることが関係の終わりを招く。それは寂しい。

今度アクセサリーを贈る。つける部位はどこが良い？間髪入れずに返信が来た。それにしても唐突だな。いきなり贈り物をくれるなんて、いや嬉しいけども。当たり前のように送ると言われるけれど、それはつまり私の住所を知っているということだ。まぁ今更驚かないけど。きっと彼がくれるものだから高そうだ。気が引けるけど人からの好意は素直に受け取った方が良かったりする。贈る側は貰われることを想定して考えてくれるのだから。断る方が些か失礼だと私は感じる。ていうかアクセサリーをあの強面が買うのを想像すると駄目だ、吹き出しそう。アクセサリーという文字を打っていることさえ面白いのに。指輪が良い。楽しみに待ってるね。初めから取り繕う必要がなかったので私は彼に敬語を使ったことが1度もない。7歳差でかなり失礼だなと考えた時もあるけど今更他人行儀に直すのも失礼だと思った。

春休みが始まってから5日ほどが経過した。ダラダラと過ごす日々は過ぎるのが大変早く感じる。久しぶりにあの男からの電話が私を呼んだ。至急家に来いとのこと。軽くメイクをしてあれほど出たくなかった外へと足を踏み出す。久々に直接浴びる日光が眩しかった。

・

17話→←15話

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す