自己愛の塊【ut】【d！】 (ページ17)

今日:4 hit、昨日:2 hit、合計:5,885 hit

16 ページ17

「大先生、今日はもう寝ちゃお」
Aちゃんは俺の手を掴んでベッドへと誘う。それは色気もくそもない誘いであった。でも僕はそれでもその言葉がAちゃんの口から出てきたことが嬉しかった。
「いろいろ疲れちゃうんだよね、わかるよ。Aは無知で無垢で馬鹿で愚図で愚鈍で純粋で、大先生が大好きな生き物だから、世間一般は知らなくても大先生のことは全部わかるんだよ。いやなこともつらいこともくるしいこともきらいなこともこわいこともかなしいことも、全部大先生に降り掛かっちゃうんでしょ？だいじょうぶ、Aはそれでも大先生が好きだから。それを受け入れるためなのがAだから」
布団は人の温もりなんて当たり前のようにしなかったけれど、それでも心地がよかった。Aちゃんは僕のとこにいてくれる。僕より小さな体で、僕を包み込もうとしてくれる。掛け布団を頭で被る。それですべてから守られたような気になって、ようやく安心した気がした。自分の家で一番安心できた気がした。
Aちゃんのふわふわが、目に入る。それに安心して、僕はようやく目を閉じることができた。
ゆっくりと、時間は過ぎる。この場所では時間という概念すらふさわしくない。
意識を落とすことはもったいないけれど、僕がこうやって守られているのは眠るためなのだ。
現実とは無関係が蔓延る場所に行くために、僕は眠ろうとしているのだ。
「はやく良くなるといーね」
優しい優しいAちゃんの声が、意識が落ちる寸前に聞こえた。

エピローグ→←15