囚人の戯れ

囚人とは ページ4

｢きみはそろそろ模範囚になれるのに、どうして素行を悪くするのかな？｣

｢模範囚扱いで待遇が良くなっても、俺の性には合わないんだよ。
囚人たちの脳みそ覗いてる方がマシだ。｣

知識を得るのを好む強欲は、模範囚となるのを嫌がっている。
模範囚はかなり良い待遇になる、とAは学んできていたため不思議に思っているが、なんとなくこの発言で大半を理解した。

｢僕からすればさっさと模範囚になって欲しいけどね。本当に面倒くさいし性格が合わないし…。｣

｢ん〜？でもお前は俺の顔が好きだろ？｣

｢顔"だけ"な。こっちはお前に両親殺されてるんだ、これでもかなり優しすぎる対応だろ。｣

強欲に親を殺されているのなら、かなり恨んでも良さそうだが、彼を見ても殺意も恨みも感じない。

｢え？…ああ、一応僕看守ですから、公平で公正であることを良しとはしてますよ。悪意からなにかしたら看守長に怒られちゃいますし。｣

理性で抑えているだけでなく、顔の良さで乗り切っている。かなり強引な方法だろう。

｢それは勿論強欲の担当から変わって貰うことも考えるね。…きみほど強欲向けの能力はあまりなさそうだから、かなり探すのは大変になりそうだけれども。｣

｢それは色々と困りますよ。ここは刑務所としても異質すぎて下級にも上級にもいけなくなってしまうし、なにより顔が見られなくなるのが困ります。｣

｢そんなに俺の顔が好みなのか？自分で言っておいてなんだが、そこまで顔が良いと言われる要素はないぞ？｣

｢それはないだろ。大抵の人間ならイケメンという部類だろうし、目がダウナーな雰囲気を醸し出しててイケメンだし…、
…よく見ても顔が良いな…。｣

夏目はどうやら親を殺された怒りよりも、強欲が好み過ぎて色々な感情が渋滞してこういう口調になっている様だ。

｢まあ…夏目ちゃんは顔が良ければ、大抵のことは報告はしてくれるが許してしまうからね。｣

夏目は特級刑務所らしい看守であるが、強欲という囚人に対しては相性は看守長よりも悪いのではないだろうか、という疑問を抱いたAは、オブラートに包んで聞いてみた。

｢流石に顔が良くても殺しをしそうになったら能力使いますよ〜。看守ですから。｣

答えは看守らしいものだった。看守長も横で頷いていたので、そういう面は信用しているのだろう。

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