ちぐはぐ【剣城京介】 (ページ7)

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■転校仲間

　目の前まで来た一年生御一行。ニコニコしている他のメンバーに対し、嫌な顔をしている剣城くんが一周回ってどこか哀愁を感じる。

「ごめんねAさん、どうしもって聞かなくて…」

「ううん、むしろ転校初日に大勢で帰れるなんて嬉しいよ。」

　そう言って一人一人と目を合わせていく。みんな笑ってくれたが剣城くんだけが気まずい顔をして目を逸らす。恐らくだが、嫌な顔をしていたということは一緒に帰りたくないという意思表示をしていたのだろう。嫌がる理由は何であれ相手が嫌がっているならそれを強要したくない。一緒に帰ってくれるのは確かに嬉しいが、相手が同意見でなければ話は別だ。どうにかして剣城くんを別行動にできないだろうか。しかしつい先程、理由が何であれと言ったが、剣城くんがサッカー部のみんなと帰りたい、ととても憎めない理由ならどうしよう。

・

「僕も転校してきたんだ！転校仲間ができてなんだか嬉しいなあ」

　影山くんは私がサッカー部の見学中に話し掛けてきてくれたので互いに自己紹介は済んでおり、松風くんとはまた違った親しみやすい人だと印象を受けた。今もまた柔らかい笑顔をしていた。そして、結局剣城くんとは別行動にできず一緒に帰っている。しかし流石松風くんといったところか、剣城くんは次第に表情が緩んでいた。私は今彼と極力話さず距離を縮めないことに専念していた。

「もう一人転校生がいてね、狩屋っていうんだ。
　輝より先に転校してきたんだよ。」

　転校生が私含め三人もいるのか、この雷門には人を集める何かがあるのだろうか。狩屋もサッカーが上手なんだよ！松風くんが続けて説明してくれる。狩屋くんを褒めてるということは一年生はみんなレギュラーなのか、いくらなんでも凄すぎないか。

「その狩屋くんは部活には来てなかったね。」

「風邪ひいたんだって、明日は絶対来るって。」

　狩屋くんは一体どんな人なのだろう。気になるが明日以降の予定が全く決まっておらず、クラスが違う上にサッカー部に見学しないとなるとあの広い雷門中では暫く会うことはなさそうだ。
　すると背後から剣城くんに呼び止められ振り向く。他のメンバーはそれを気にせず会話を続けていた。

「…一緒に帰りたくないから、嫌な顔したんじゃないからな。
　天馬に引っ張られたのが嫌だったんだ、悪かったな。」

　その瞬間、剣城くんは優しい人だと確信した。
　私はありがとうと返した。

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