同窓会【影山飛雄】 ページ1
「Aー、今影山君とどうなのー?」
「どうせ未だにラブラブなんでしょ〜?影山くん、今や有名人じゃん!羨ましい」
高校の同窓会。
嘗て仲の良かった女友達にそう質問攻めにされるも、私は首を縦に振らない。いや、振れないのだ。
「あー…高校卒業して一年後に、距離置くことにしたの。で、そのまま」
「ふーん…は?え〜っ?!」
驚く友達を横目に、私はビールを一口飲む。
…そう、あれは大学一年の時。
「俺、きっとそのうち海外にも行く」
「…だよね。知ってる。応援してるよ」
彼の口から出たその言葉。高校まではあんなに近かった彼の背中はどんどん遠ざかり、遂に私が気軽に肩を叩ける距離からは消えてしまったようだった。
「だから、お前を俺に縛りつけるのはいけないと思う」
彼にそんなことを言わせたくなかった。私が好きで居るのに、そんな悲しそうな、罪悪感があるような顔をされると此方の胸が痛む。
『行かないで』
だから、そんな言葉は飲み込んで、私は笑顔で彼に向き合った。
「…じゃあ、別れよっか」
私の彼との思い出は、ここで終止符が打たれている。
その時の私の顔は、きっとこの世のものとは思えないほど歪んでいて、醜かっただろう。
今だって未練タラタラなんだから。
「でもさー、A、まだ好きなんでしょ?」
「…好きだよ。でも、私が簡単にそんなこと口にしちゃいけないくらいの人になっちゃったから」
「幼馴染が何言ってんのよー」
ビールを煽る私の肩を、彼女らに叩かれる。
クソ、痛い所突いてきやがって。
…好きだとか何だとか、そんな気持ちを抱いてはいけないのだ。
彼は今やマスメディアに追われ、テレビで取り上げられ、バレー界の驚きをかっ攫うような男なのだ。
『過去の女』、などと言ってスキャンダルになることなんて嫌だから、できれば今も話題に出して欲しくなかった。
「あーあ、ガキの頃に戻りてぇ」
空になったジョッキを、テーブルにダンと置く。
…いけないいけない、社会人になってからはこういう雑な言動や行動に気を付けていたのに。
思わず咳払いを一つする。
友達二人は、私の微妙な気配を察したのか、別の同級生の元へ行ってしまっていた。ありがたい。
しかし同窓会、と言っても私が高校を通して友となり得たのは彼女らくらいしかいない。
…だけどやっぱり一番は、
「…幾つになっても変わってねぇな、その癖」
「…え?」
影山飛雄。
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作者名:みやいち | 作成日時:2020年11月15日 2時