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side A
｢おぉ･････････お疲れ｡｣
振り向いた敬浩くんは､隆二の少し後ろにいる私を見て目を見開いて･･･
私達の繋がれた手を見て､更に目を見開いた｡
｢TAKAHIROさん､｣
｢隆二････ちゃんと､A送れよ･････｣
隆二の言葉に被せるように､敬浩くんは､真っ直ぐ隆二の目を見てそう言って
“敬浩くんに関係ない！”そう言おうとした私より先に
｢そのつもりです｡Aは､僕の大切な人なんで｡｣
隆二は敬浩くんから目をそらさずにそう答え､私の腰を抱いた･･････｡
.
.
“大切な人”
彼のその声で､彼の言葉で､確かにそう言った｡
どーしよ
やっぱり私･････････どうしようもなく､隆二が好きだ｡
それが例え､隆二の本心で無くても､その言葉だけでいい｡
.
敬浩くんの隣の女の人は､私を不思議そうに見つめた後､凄く嫌そうな顔を､１ミリも隠すことは無くて･･････私はどうしたらいいのか分からなかった｡
私の心は､この人が苦手だと言っている｡
困った私は､俯こうと少し顔を下げた｡
その時､私の腰に回した隆二の大きな手が私の手をギュッと握って･････････
その手が､“大丈夫”そう言ってるようで､俯きかけた顔を再び上げた｡
“大丈夫”
そう､頭で心に暗示をかけて｡
.
｢ヒロムくん､奥空いてますよね？｣
｢おぉ､使っていいよ｣
突然現れた私達に､何がどうなってる？と言わんばかりのヒロムだけど､黙って隆二に個室のキーを渡した｡
｢TAKAHIROさん､お邪魔してしまってすみませんでした｡失礼します｡･･･A､行こう｣
｢え､あぁ､うん｡｣
隆二に手を引かれて奥へ向かおうと足を向けた時
｢Aっ、｣
敬浩くんに呼び止められて････振り返れば､何か言いたげの敬浩くんの後ろに､さっきとは打って変わって悲しげな目をした彼女が見えた｡
｢････････････あの･･･お邪魔してすみませんでした･･･｣
きっと事情を知らない人からしたら惨めに見えたと思うけど､私は敬浩くんの後ろの彼女へ､丁寧に頭を下げた｡
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作者名：りあ | 作成日時：2017年1月25日 20時
