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零side.


俺は何を言っているのかと我に戻り
律から離れようとした。
すると腕を引っ張られ共に倒れ込んだ。
うつ伏せの俺の下で律が
強く俺を抱き締める。


『私は"ここ"に居るから。』


そう小さく言った律の声は
少し震えていた。
大事な人を失い残されるという事が
どれだけ辛いかを経験してきた律。
その言葉は短くても俺の穴だらけの心を
埋めるように染み込んで来た。

情けなくも目頭が熱くなる。


『誰だって時には寂しくて寂しくて
耐えられなくなる夜だってある。
男も女も関係ない、それだけ大きなものが
目の前から無くなったんだ。』


そして"吐き出せ"と最後に言った。
誰にも言えなかった事、
封をし続けてきた俺の奥の想い…


降「お、れ…達は…っ
同じ志を持って…、あの日々を…過ごして…」


ヒロも、松田も、萩原も、伊達も…
辛くも輝かしかった過去の日々。
今はもう…あの頃の俺達は思い出の中、
これから先の未来に皆の笑顔は無い。
あいつらと過ごした俺の笑顔も無い。


降「もう…、無いんだ…っ」


覚悟の上で目指した立ち位置、
こんなにも早くて孤独だったとは…
感情と連動した涙腺はどれくらい振りに
崩壊しただろう。
自分でももう覚えていない。

ゼロ距離の律の胸辺りがしゃくり上がった。
俺の耳を冷たい何かが触れる。
ゆっくりと体を起こして見下ろした
律の顔は俺の目を捉えながら
幾つもの涙を流していた。

俺の目から落ちた涙が律の涙と交じる。
律は何も言わずに俺の頬を撫でた。
悲しくて、寂しくて、でも優しい表情で。

過剰な水分を纏った視界は
瞬く間に悪くなっていく。
俺の後頭部にゆっくりと回された腕は
彼女の胸元へと誘導する。
聞こえる心音、それは何よりも
律が今"ここに居る"事を教えてくれた。


『誰にも言えなかったね、辛かったね…
こんな時にごめん、私嬉しいんだ。
零が私を頼ってくれたの…』


優しい手付きで撫でてくれる手は暖かくて
更に涙腺を緩ませる。
いつも張り詰めている糸が
律といると自然と緩まるのを感じていたが
ここまで俺の中に彼女が入って来ていたとは。
あぁ…やっぱり俺は律が…





降「……好きだ。」

78.恋する…乙女?→←77.穴だらけの…



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りん(プロフ) - 私は元々トリップ系とか好きなんですよよく調べたりしたりするので文ストとか今は待ってますし(*´ω`*)アニメはだいたい見てますよ(*´ω`*) (2018年9月18日 2時) (レス) id: 5016550d2e (このIDを非表示/違反報告)
いわし(プロフ) - りんさん» 私も降谷君が今の所勝ってしまいますが赤井さんも捨てがたいのです。゚゚º(゚´ω`゚)º゚゚。笑 (2018年9月18日 2時) (レス) id: 9417f12aeb (このIDを非表示/違反報告)
りん(プロフ) - 降谷さん好きなんですよ名探偵コナン中では赤井さんもですが降谷さんが勝ちます(*´ω`*) (2018年9月18日 1時) (レス) id: 5016550d2e (このIDを非表示/違反報告)
いわし(プロフ) - りんさん» ありがとうございます。゚゚º(゚´ω`゚)º゚゚。まさかここまで来られると思ってもなかったです笑/お楽しみ頂けるよう頑張ります!(*^^*) (2018年9月18日 1時) (レス) id: 9417f12aeb (このIDを非表示/違反報告)
りん(プロフ) - 続編おめでとうございます続き楽しみにしてます (2018年9月18日 1時) (レス) id: 5016550d2e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:いわし | 作成日時:2018年9月17日 23時

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