彷徨う先に３ (ページ5)

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｢最近はあんまりなかったけどね｣

｢だねえ、ウジニヒョン〜何か知ってます？｣

ヒョンジンが近くにいたウジニヒョンにそう聞くと、ヒョンは知らないよと首を横に振った。

2人で呼び出される理由や内容なんかは、基本僕たちに共有されることはない。最年長のヒョンでも知らないなら、今回もこう……なんていうか、リーダーとヌナだけの、堅くて重い話なんかをしてるんだろうか。もちろんウジニヒョンも知らなければ、リノヒョンも知らなさそうだし。

無理に詮索するつもりは無いけれど、僕たちは何も知らない傍観者でもないんだ。ヌナばかりこんなに呼ばれる理由だって、大体の見当はついている。

僕たちStrayKidsが、そう簡単にグループ活動が円滑に上手くいく訳ではないという境遇にあるのは、ここにいるみんなが分かっていることだろう。

｢戻ってきた時にヌナの顔色が良くなかったら、大抵ヨンボクかイエニが癒し役になるじゃん？出動の準備しておきなよ｣

｢出番がないのが一番いいんですけどね｣

どうやら話を聞いていたらしいイエニがこちらを見ながら呟いた。Aヌナ、本当に驚くほど人に頼ることをしない人だから、いつか溜めすぎて壊れちゃうんじゃないかって怖くなる時がある。

デビューして、アルバムを出してカムバックして、音楽番組を中心とした活動をして、サイン会なんかもやったりして、そうして半年が過ぎた。ここまで休まず走り続けてきたのは全員そうで、多少たりとも疲労が溜まっていくのは感じていた。

……あれ？Aヌナの笑顔を最後に見たのはいつだったっけ。舞台に上がっている時の表向きの笑顔じゃない、心から笑った顔。もしかして、パッと頭に浮かばないくらい最近は見れてない？

なんだかまた、胸の辺りがザワザワと騒ぐような感覚を覚える。気のせいだ、絶対に気のせい。自分もちょっとだけ疲れてて、ちゃんとヌナのこと見れてなかっただけ。

Aヌナはこの後、チャニヒョンと笑いながら練習室に戻ってくるだろう。いつもみたいにおかえり、また事務所の偉い人達に揉まれてきたんだねって、優しく言葉をかけてあげて、それでまたいつも通りに戻るんだ。

俺たちがすぐに戻らなかったら気にせず練習を続けてとチャニヒョンに言われていたリノヒョンが、時間を確認して立ち上がった。

2人が早く戻ってくることを願いながら、ここに残された僕たちは練習を再開する。どうか何事もありませんように。