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｢A、ごめん。突き放すようなこと言っちゃって本当にごめん｣
｢ううん。私も色々考えるきっかけになれたし。元々は私が人にまともに意見すら言えないようなこんな性格だから……｣
会社からスカウトを受けて連絡するまでの過程だって、最初は周りの人に勧められたから。でもテレビの画面の奥でキラキラと輝く、たくさんの人を笑顔にするアイドルに少しでも興味があったのは事実で、だから最後は自分からオーディションを受けてみると親に伝えた。
そこから偉い人達に囲まれて、日々言われたことを守ってきた。その偉い人たちの言う通りにしていれば間違えないと思っていた。
そんな時に私が、いや、チャニが前に立ってくれて会社からの反対も全て押し切ってスキズとしてデビューしたというのに、満足いく成績が残せていないという現実を目の当たりにして、｢私がちゃんと言うことを聞かなかったからだ｣なんて焦りを覚えた。
極めつけに、音楽番組の収録で訪れた放送局のスタッフが私だけでなく他のメンバーに関しても酷いことを言っていて、それだけは許せなくて揉めて、多方面に迷惑をかけてしまった。私は自我を出すべきでは無いんだと思うようになった。
そうして全部一緒に背負うと言ってくれたチャニにも上手く頼れなくて、結局自暴自棄になりかけた。とにかく最悪だ。
せっかくみんなが手を引いて、どんなに険しい道でも一緒に飛び込んでくれるのだから、もう少しだけ自分のために生きてみてもいいのかもしれない。まだがむしゃらの段階でもいいのかもしれない。
｢チャニ、私また頑張るから、戻ってきてもいい？｣
｢もちろんだよ。おかえりA｣
ただいまと言葉にする前に、ずっとチャニの手によって包まれていた手をそのままぎゅっと握り直される。そうしてチャニの方に身体ごと引かれて、優しく抱きしめられた。
｢A、どうか自分の選択が全部間違ってるなんて思わないで｣
｢でも、それでも間違ってる時もあるでしょう｣
｢そしたら絶対に俺がそれは違うって言うから。俺を信じて｣
｢分かった。信じるよ。チャニは私のこと、きっと私より分かってるもん｣
今回みたいにちょっと時間がかかったとしても、また絶対にあなたは私を見捨てないで救おうとしてくれる。今までだってそうだったから。
だからもう少しだけ、私はそれに甘えて、縋ってしまってもいいだろうか。
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作者名：ゼロ | 作成日時：2023年10月20日 22時
