良き理解者になりたかった #3 ページ16
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久しぶりにその声で名前を呼ばれた。
驚いて振り向くと、息を切らしたチャニの姿が目に入る。2人きりでこうして顔を合わせるのは何日ぶりだろうか。
何も言わず鋭い眼差しでこちらに向かってくるから、どうも怖気付いてしまったのか、口が震え、後退りをしてしまう。
｢A……｣
｢チャニ、あの、ごめんなさい。わ、わたし｣
｢いや、聞きたくないよ。やっぱり受け入れられないんだ。どうしても嫌だって言いたいんだ。俺のわがままだけど……絶対に認められないんだよ｣
眉間に皺を寄せ、くしゃりと辛そうに表情を歪めるチャニが私の腕を静かに掴んだ。なんて弱々しい力なんだろう。全部私のせいだ。
｢待って、違うの。ちょっと私の話を聞いてほしい｣
そう言って近くのたまたま空いていた部屋に入る。チャニはまるで私が第1本部の人たちと話すことを知っていたかのように私の前に現れたのに、どうやらその内容は全く知らないらしい。たまたま会ったヒョンジンがチャニに伝えたのだろうか。
｢A、話って｣
｢私、直談判しに行ったの。断ってきた。それは出来ないって。私はやっぱりスキズでいたいってちゃんと伝えたの｣
｢……えっ、ほんとに？｣
｢そしたら数日前にその話が結局なくなったみたいで、明日あたりに話す予定だったんだって｣
私が話をしていくうちに、チャニはぎこちなく逸らしていた視線をやっとこちらに向けるようになった。こんなに幼い顔だったっけ。なんだかこうして2人で真面目な話をしていると、練習生の頃に戻ったような感覚になる。
｢でも私そんなこともちろん知らなかったから、嫌なんですって文句みたいな言い方を何度もしちゃって。そしたら、ずっと私の事見てくれてた社員の人が、『こうしてAが会社に反対意見でもちゃんと自分の意志を伝えてくれたのは初めてだよ』って言ったの｣
怒られるかと思ったら、優しい笑顔でそんなことを言われて、正直驚いて思考が止まってしまって、あまり上手く言葉が返せなかった。
｢成長したんだねって、そう言って謝られた。わたし、スキズでデビューして凄く成長できたんだって。そんなこと言われたら、やっぱり私はスキズでいたい。
これは私のわがままなんだけれど、これからもスキズのAでいたい。みんなと一緒に歩きたい。たくさん振り回しちゃって本当に、本当にごめんなさい……｣
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作者名：ゼロ | 作成日時：2023年10月20日 22時
