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作業室のある階まで辿り着くと、なんてタイミング。ちょうどヒョンが中に入ろうとする寸前のところだった。とりあえず声を張り上げて名前を呼んだ。
｢ヒョン！ストップ！｣
｢え、チャンビンとイエナ？｣
｢話があります。もちろん中に入れてくれますよね？｣
先程からイエニは口を閉じたまま、ただ俺の後ろを着いてくるだけ。でもこの状況で逃げないだけ偉いな。さすが釜山男子！今こんなこと言ったらふざけるなと怒られるだろう。
チャニヒョンは困ったように、辛そうに口角を上げて笑顔を作り出してるようで、拒否することはなかった。そのまま3人で部屋に入る。
｢……ほんとは介入するつもりはなかったんです。ヒョンとヌナのことだから、総合的に判断して俺たちが介入する必要性はないと思ったので｣
でも、さすがにこれほどまで状況が変わらないなら話は違いますよね。そう続けると、ヒョンはただごめんと一言だけ呟く。
｢俺も分からないんだ。どうしたらいいのか、なにが最善策なのか｣
｢内容は教えてくれないんですよね｣
｢うん、それはダメなんだ｣
何も言えないからこそ、こうしてお互いますます拗れていくのはきっと当たり前のことだ。何も分からないなら俺たちがどうにかして解決出来る問題でもないんだろうし。
｢でも全部俺が悪いよ。長年共に過ごしてきたからって、それだけでAのことならなんでも分かってる、理解してあげられているって勘違いしたんだ｣
｢そんなこと……｣
ヒョンがそれなら、俺たちなんて同じ土俵にすら立てないじゃんか。確かにヌナは本当に優しいから、自分の意見よりも人の意見を最優先するし、会社にわがままを言うなんて以ての外。
そうしてヌナはほとんど自分から自分を発信しないから、色んなメディアだって世間だってヌナを勝手に解釈していいように使ったりなんてことはザラにある。
｢……でも、誰もヌナのこと分からなくても、絶対にヌナがスキズを愛しているって口にするのは絶対に嘘じゃない。間違いないと思います｣
ここで、今まで口を閉ざしていたイエニが震えた唇からゆっくりと言葉を紡いだ。
｢ヌナって器用に見えて実は不器用なのに、本当に優しいから色んな人の気持ちや意見を汲み取ってどうにかしようとしちゃうじゃないですか。いや、優しさというよりも、自分の思いを外に出すのが苦手だからこそなのかも｣
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作者名：ゼロ | 作成日時：2023年10月20日 22時
