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｢じゃあこれで和解ってことでいいの？｣
｢た、多分？｣
｢仲直り……した時にすることとかあった？｣
｢なんだろう。ハグとか？｣
｢ハグって、子どもじゃん｣
｢なんで笑うの。そっちから言ってきたのに。じゃあそれで完全に仲直りってことにしよう｣
そう言って立ち上がったA。いや本気でハグしようとしてる？
｢ほんとにやるの？｣
｢だってまだ何か気まずいし｣
｢ハグする方が気まずいんじゃ｣
｢そんな事ないよ。いつもみんなしてる｣
もしかしなくても、ただハグしたいだけなんじゃないか。この人グループでは上だけど実際は3人兄妹の一番末っ子らしいし、自覚ないけど結構甘えただし、絶対そうだ。
まぁきっと謝罪の意味も込めたものなんだろう、と思うしかない。大人にもなってこんなことをするなんて。正直に言うと恥ずかしいからクッションの一つでも挟んで一瞬だけして終わりたいんだけど。
｢……分かったよ。ほら！｣
諦めて立ち上がり渋々両手を前に広げると、Aはすぐにこちらに飛び込んできた。残念ながらAの方が身長が高いので大型犬に覆いかぶさられている。いや多分メインクーンのほうが近い。うんしっくり来るな。
俺の肩に顔を埋めてしばらく動かなかったAが、少しして俺の耳元で呟いた。
｢リノ、ごめんね｣
｢……うん｣
｢私ちょっとあの子に嫉妬しちゃってたのかもしれない。私がここにいる限り、誰にもみんなを取られたくないって思っちゃうくらいにはみんなのことが大好きみたいで。嫉妬深くて醜いね｣
｢そんなことないんじゃない？｣
｢面倒くさくてごめん｣
｢んー、それだけ大事に思ってるってことじゃん。親が娘を嫁に出したくないみたいな感じ？｣
いや何言ってんだろう。でも他に例えも見つからないし。Aの本音はこれでも、もしメンバーの誰かに恋人ができたとしたら、こんな気持ちは一切出すことなく、押し殺してただ祝福するんだろうな。君はそういう人だから。
｢そ、そうなのかな……？｣
｢もう帰ってもいいんだけど｣
｢やだごめん。リノ今日泊まるんじゃないの｣
｢俺がいつそう言った｣
｢だってみんなのところに帰るの気まずいでしょ？だから明日2人でちゃんとみんなに謝ろう｣
｢……確かに、そうだね｣
なんだか上手いように言いくるめられた気がするけど、今日ばかりは仕方ない。分かったの意味も込めて、申し訳程度に腕を回していたAの背中をあやす様に何度か叩いた。
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作者名：ゼロ | 作成日時：2023年3月10日 22時
