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Lee Know
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ついさっき俺と入れ替わるようにヒョンがじゃあね！なんて笑顔でこの場を去ってしまって、一気に静寂が訪れた。
あの人、帰り際に俺にだけ見えるようにかなり不自然で恐ろしく下手なウインクをかましてきたけど、全然大丈夫じゃない。もう2人とも黙り込んでから5分は経過した。
お互いにごめんなさいの一言を言えば全てが完結するのに、いざ顔を合わせるとなかなかそれが出てこない。本当、なんて意地らしく不器用なんだろう。
一瞬だけAの顔を盗み見ると、ちょうどその真っ赤になった目と合ってしまい、決まりが悪そうに逸らされた。
……かと思えばその後すぐ、最初に口を開いたのはAだった。今日あった事、どんな思いだったのか、先程あのヒョンと話していたこと、それらをゆっくりと話して、それを俺は黙って聞く。
｢それで、私もイライラしちゃって、リノに当たっちゃったの。言っちゃいけない言葉だってたくさん言っちゃった。……リノは何も悪くないよ｣
照明の光に照らされて、Aの伏せた目を覆うように生えた長いまつ毛の影が頬に差した。
話を聞いてみれば自分もかなりAに酷いことをしてしまったと自分の発言に後悔をする。
｢……俺だって、Aが特別扱いとか、俺たちとは別の扱いをされるってことが一番嫌なことだって分かってたのに、こういうことしたから……全然悪いし｣
｢でも、私だってその立場だったら同じことするしかなかっただろうし、仕方ないよ……｣
お互いテーブルに向かって話をしているのかと思うくらい顔を合せず、もぞもぞとテンポの悪い会話を続ける。
けれど俺たちは絡まった糸を少しずつ解いて手繰り寄せていくように、確実に和解への道を歩んでいた。
｢私、あんなこと衝動的に言っちゃったけど本当に後悔してるし、ほんとにめんどくさい人だなって思うのも無理ないし、その、失望したよね……ごめんなさい｣
｢あそこで我慢出来る人いたら相当だと思うよ。俺だって、なんも話聞かないで感情的になって怒鳴ったりして……手まで出そうとしたの、本当にごめん｣
やっと、ようやくお互い口に出した謝罪の言葉。ああ、こんなにすっきりするなら強がらずに素直になって早く言えばよかった。
向こうも同じことを思っていたのか、ずっと強ばっていた表情が徐々に柔らかくなって、優しく笑った。
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作者名：ゼロ | 作成日時：2023年3月10日 22時
