お互いに、不器用で #2 ページ38
Bang Chan
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｢もしもし、A。今からそっちに行こうと思うけど大丈夫？｣
電話の奥から聞こえる声はかなり小さくて震えていて、時折鼻をすする音も聞こえてくる。
自分が作業室に行くと言われたがもう暗いし、憔悴しきっている人に足を運ばせるわけにはいかないので、こちらからAの宿舎に伺うことにした。リノはベッドにて塞ぎ込んでしまっているらしい。
｢チャニヒョン……！お願い、戻ってきて！ヌナとリノヒョンが！｣
スタッフの方々と挨拶するような形で会話を交わしていた時にヒョンジンが大層焦った顔をして俺の名前を呼びながらこちらに向かってきて、一体何が起きたのかと思った。
楽屋に戻ってみればリノがスンミンとチャンビンに抑え込まれていて、その目の前でAがリノを強く睨みつけていた。
ハンやリクス、イエニなんかはどうしたら良いか分からないのかその場に固まって、目には涙を浮かべ恐怖に怯えている様子だ。
｢2人とも、話は後で聞くから今は落ち着いて｣
2人の肩に手を置いてできるだけ無駄な感情を込めずに伝えた。お互い無言で睨み合っている様子が2匹の猫が威嚇しあっているように見えたが、実際問題そういったレベルの話では無いのだろう。
｢スンミナ、リノは大丈夫だからAの着替えを持って更衣室まで連れて行ってあげて｣
リノを後ろから抑えていたスンミンにAを連れて外に出てもらうように伝える。Aがいなくなって、リノはひとつため息を漏らし、頭を冷やしてくると一言だけ呟いて楽屋を出ていってしまった。
｢こうなった一連の流れを教えて欲しい｣
俺がそう言うと、チャンビン主体でここに残っているメンバーが今起こった出来事を段階を踏んで話してくれた。
あの二人が周りのことを考えられないくらい感情に支配されて言い合いをするなんてよっぽどの事で、話を聞いてようやく状況を完全に理解した。
｢ヒョン、2人をお願いします｣
｢分かったよ。チャンビンは他のみんなをよろしくね｣
｢……わかった｣
序列最下位なんていうけどやっぱりこういう時は頼りになるヒョンなんだから。安心させるために任せろとの思いで肩に手を置いた。
Aの宿舎に着いて、連絡を入れればすぐにAが降りてきた。フードを深く被っていて表情は読み取れない。
来てくれてありがとうと小さな声で喋ったと思えば、それっきり部屋に入るまでは終始無言だった。
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作者名：ゼロ | 作成日時：2023年3月10日 22時
