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｢お前、こっちの思いも知らないで勝手にあーだこーだ言ってるけどさ｣
｢そんなの知らないよ！結果的に私が不快に思ってたら意味無いでしょ！？そんなことしたっていつか必ずバレるんだよ！隠し通せるわけないの！｣
｢……もしかして、アイツとなんかあったの｣
ヒョンの言うアイツとは相手だと勝手に噂をされている後輩のガールズグループのメンバーの一人だろう。
この噂の発端は、その人の一方的な匂わせ行為だ。ヒョンはあの人とは何度か話をしたことがある程度で、自分に好意を向けられていることすら知らなかった。
そしてなぜか無駄にAヌナの名前が出てきてしまい、ヌナのアンチもファンもどちらもそれに触れ始めて話の方向性が変わってきてしまった。だからヌナにはこの件に触れさせないようにと、ヒョンは僕たちにこの話はするなと釘を刺した。
まさかその気遣いがこうして裏目に出てしまうなんて。一触即発、いやもうほぼ手遅れなこの状況に僕達は十分に息をすることさえできない。
｢私は仲間はずれなの？信用ならない？弱いから？……私はいなきゃ良かった？｣
｢ヒョンがいる前でそれ言えんの？｣
｢今チャニは関係ないでしょ、話をそらさないで！｣
｢話を逸らしてるのはそっちだろ！｣
こんなに感情を剥き出しにして怒るヌナを見るのは初めてだった。ヌナが怒る時は逆に感情を殺して、淡々としていて恐怖を覚えるような怒り方をするから。
ヒョンはもう怒りに支配されて我を忘れかけてるし、年長者同士の喧嘩に誰も下手に口を挟める人が居ないから様子を伺うことしかできない。
｢さっきから聞いてればなに、お前は俺の言葉よりもよく分からないどうでもいいやつの言葉を信じるんだ？｣
｢は？なにそれ｣
｢そうだろ。俺が何言ったって口挟むじゃん｣
｢私にだけなにも伝えなかったことは無視？……私たちの過ごした時間はなんだったの｣
｢お前マジでふざけんなよ……！｣
遂にリノヒョンは距離を詰めてヌナの胸元へ手を伸ばした。咄嗟にチャンビニヒョンが動いて、寸前のところでヒョンの腕を掴んだ。ヒョンがいる位置から近かった僕も後ろからリノヒョンをおさえた。
｢ヒョンジナ、チャニヒョン！｣
僕がそう言うとヒョンジンは急いで部屋を出ていって、その後すぐにチャニヒョンと一緒に戻ってきた。
ヒョンに宥められ一旦冷静になった二人だったが、そこから一切言葉を交わすことなく、僕達も終始無言で退勤の準備を続けていた。
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作者名：ゼロ | 作成日時：2023年3月10日 22時
