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さすがに監督も笑って許してくれたけど、お互いワンテイク目でもうかなりエネルギーを使ってしまった。特にヌナなんて既に疲労困憊といった表情。
｢ヨンボガ、早く……早く終わらせないとね……｣
｢そうだね……僕もなんていうか、どきどきしちゃって心臓がもたないよ｣
｢今もメイキング用のカメラ回ってるしちゃんとしなきゃ｣
｢そうだった、忘れてた｣
そうして2人で目を合わせハハハと空笑いをしたあとに監督の指示を仰ぐ。2テイク目が始まりそうだ。頑張れAヌナ、頑張れ自分。
本日何度目か分からないヌナとの数ミリといった至近距離。今まで自分から勢い余ってヌナの頬にキスをしそうになったことはある。あくまで未遂。
でもヌナからこんなに距離を詰められたことはない。これはかなりレアな体験をしていると思う。でもこの後自分から手を払い除けて逃げてしまうんだけど。
｢はいカット！1回確認しましょう｣
監督の声と共に一気に肩の力が抜けてヌナの元へと戻り、2人でモニターを覗き込む。
顎を持ち上げられるシーンはかなり近くで撮られていたみたいで、画面いっぱいに広がっている僕とヌナの横顔。
ヌナから少しずつ近づいてくるシーンは第三者視点だと映画のワンシーンでも見ているかのような気持ちになって、思わずヌナの腕にしがみついてわ〜！と声を上げながらモニタリングする。
この後に僕がヌナの手を払って逃げ、その後ろ姿をヌナがその場で立ったまま見つめ、最後に軽く口角を上げて笑うところまでが今撮影したシーン。
いくつもあった画角の違うカメラの映像をひとつずつ確認して、特に問題はなかったためようやく撮影終了。
さすがにヌナも骨が折れたのか腕にしがみついている僕を剥がすことなくお疲れ様と軽くハグしてくれた。
｢ヨンボクはこの後も撮影ずっと続くもんね｣
｢意外とすんなり終わったから全然元気！｣
｢うん私たち頑張った｣
メイキング用のカメラがこちらにやってきた。状況の説明を軽くして、流れで2人でセルカを撮ることに。
ヌナがスマホを持って、画面に収まるように近づく。先程とは違った柔らかな雰囲気で自然な笑顔の2人が画面に映っていた。最近はヌナもかなり表情豊かにセルカを撮っているのでステイもかなり喜んでる。
｢オッケー、じゃあ頑張ってね｣
｢ありがとうヌナー！｣
このセルカが公開されるとしたらまだまだ先。早く見せてあげたいなとワクワクしながら次の撮影へと移った。
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作者名：ゼロ | 作成日時：2023年3月10日 22時
