羅針盤の指す先 ページ24
Bang Chan
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初めて会った時の君を今でも鮮明に覚えている。
自分が練習生になってもうすぐ1年が経とうとしていた。最初の緊張もすぐに解れ、気がつけば年齢、国籍、男女問わず色んな練習生と仲良くなれた。
ただ、練習生はかなり入れ替えが激しく、仲良くなったと思えばもう次の週には居ないなんてことが普通にある。
次に入ってくる人達はすぐに居なくならないでほしいな、なんて淡い期待を抱きながら今日も練習のために事務所へ向かう。
警備のおじさんにいつも通り挨拶をして中に入ったところで、何回かレッスンにも顔出ししている事務所のスカウトとかオーディションとかそういうものを担ってる偉そうな人の後ろ姿を見かけたので挨拶をした。
｢おおチャニか｣
近づいて気がついた。偉い人の奥に知らない顔の子がいた。
すらっとしていて身長が高くて、こちらがちょっと見上げる形になっている。顔立ちも一度見たら忘れられないくらい整っていて、芸能人の素質があるってこういうことなんだろうなと思った。
｢今日からうちの練習生になるAだよ。日本人。ついでだから君が事務所の案内をしてあげなさい。先生には伝えておくから｣
Aと呼ばれたその子はこちらをみて不思議そうな顔をしていて、小さくあの……と声を漏らした。
｢私女なんですけど、いいんですか｣
｢ん？ああ、そこは気にしなくていいよ。うちは男女一緒に練習するからね｣
｢そうなんですね。よろしくお願いします｣
深く頭を下げたその子。同い年くらいなはずなのに一つ一つの動作が大人びている。
じゃあと僕にAを託して足早に事務所を出ていった偉い人。忙しかったんだな。
｢改めて、今日から練習生になったAです。よろしくお願いします。チャニさん……？｣
｢うん！僕たちもう友達だから気軽に話してよ！｣
｢……わ、分かった｣
相当緊張していたんだろう。僕が笑顔で気さくに話しかけると固まっていた表情がゆっくりと溶けていくように優しくなっていった。整った顔立ちのせいで少し冷たそうに見えたがそんなことはなく、とても可愛らしい子だ。
｢A韓国語上手だね｣
｢うん。生まれたのは日本だけど、7歳で韓国に来たから韓国の方がちょっと長い｣
｢そうなんだ！僕はオーストラリア国籍なんだよ｣
｢オーストラリアって英語だよね？私英語もちょっとだけ喋れる。おばあちゃんがアメリカに住んでるの｣
｢じゃあ三ヶ国語喋れるの？凄いね！｣
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作者名：ゼロ | 作成日時：2023年3月10日 22時
