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｢ヌナどうし……｣
｢しー！こっちおいで｣
僕の言葉を遮るように手招きされたので、とりあえず立ち上がってヌナの後に続くように外に出た。
｢まだイエニ始まったばっかりだよね｣
｢うん……なんで？｣
｢話は後で！とりあえず着いてきて｣
聞いてもなかなか内容を話さないヌナに腕を掴まれ、強制的に歩き出すことに。
エレベーターに乗って数階移動して、長い廊下をしばらく歩いた先はAヌナ専用の作業室だった。
中に入るや否や、ソファに座ってと言われたのでとりあえず腰掛ける。ヌナは持っていた自分のバッグを机の上に置いてこちらに向き直った。何を言われるのか全く分からないから少しだけ息が詰まる。
｢スンミナ……喉の調子あんまり良くないんでしょ｣
少しだけ眉を八の字に下げたヌナが、たったそれだけ言い放った。今日ヌナと話したのはヌナが部屋から出る直前の一言二言くらいだったのに。なんでバレてるんだ。
｢な、なんで｣
｢さっき話した時いつもと若干様子が違ったし、無意識に喉を気にしてるような仕草もしてた。風邪ひいた？｣
｢うへぇ、なんでそれだけでバレるんだよー｣
｢チャニがあの時会話聞いてたら多分あの人も気がついてたと思うよ。私たちはレコーディングはいつも指導する側だからね｣
熱はさすがに無いよね？と近づいたヌナが僕の前髪を掻き分けて手を額に当ててきた。熱は無いはずだがヌナの手は少しだけひんやりとしている。
｢ないっぽいけど、咳とかは？｣
｢風邪の症状は何も無いよ。多分だけど昨日調整で少し歌いすぎたせいなのかもしれない｣
｢練習頑張ったんだ。えらいね。あと最近乾燥してるしね……｣
｢加湿器も忘れずに使ってるのになぁ｣
先程掻き分けた前髪を直すように優しく髪を撫でられる。流行病に関しては、最近仕事前に必ずと言っていいほど全員検査してるし、心配は無い。
｢そりゃあ人間完璧なことないんだから仕方ないよ。そんな日もあるって割り切らないと……｣
｢ごめん。でも今日絶対レコーディングは終わらすから｣
｢本当に？大丈夫？日にちずらそうと思えばずらせるんだよ｣
｢いい。忙しいもん。次の日に治ってるかも分からないし｣
｢確かにね。スンミンならそう言うと思ってた｣
だから私たちに喉の違和感のこと何も言わなかったんでしょう？と冷蔵庫の中を漁りながら僕に向けてそう言ってきた。このヌナはどこまでもお見通しってわけか。
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作者名：ゼロ | 作成日時：2023年3月10日 22時
