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｢はぁーチャニヒョンもよく承諾したよね｣
｢チャニを説得するのかなり時間かかったよ。私さすがに床に額をつけそうになった｣
｢えっそこまで｣
｢ちょっと険悪な雰囲気にもなったし｣
うーん、思い返してみればデビュー直前にチャニヒョンとAヌナがあまり言葉を交わさなかった時期があったような。
とはいえ練習時や仕事中もそれを引きずっている訳ではなく、質問に答えたりアドバイスしたりと普通の会話はしていたからあんまり気にしてなかったけど。
｢曲制作に関してはチャニに一番教わったからね。向こうもそれをうちで生かして欲しいって思うのは当たり前だよ｣
｢おれもそう思うよ。曲提供するなって言ってる訳じゃなくて、そっちをメインにするのはねって｣
｢まぁでも事務所も今のこの体制が最善策だって言ってるし、印税すごいし｣
｢わぁ急に生々しい話を｣
人差し指と親指で丸を作って言ったヌナ。ヌナ別にお金に頓着のない人なのに。
｢まぁこのお金はみんながもし困った時とか、いざと言う時のために取っておくから｣
｢ヌナ、ほんとどこまでもおれたちのためにって｣
｢当たり前でしょ。それでも足りなかったら私は臓器の一つや二つ売る覚悟もしてるし｣
｢怖いこと言わないでよ〜！｣
ヌナが言うこと全部冗談に聞こえないからあまりにも怖すぎる！話を変えようと再度テレビに視線を移すと、もうとっくに例のグループのステージは終わっていてそろそろエンディングに差し掛かるところだった。
｢一位になった時のために、今のうちに先方にお祝いのメッセージでも考えておこうかな｣
ヌナは仕事用の携帯電話を手に取ってまたソファに座った。実際のヌナが使っている携帯の中身はまぁとにかく質素で、連絡先もおれたちとあとほんの数人しかいない。
たまにうーんと唸りながらメモにメッセージの内容を打ち込んでいくヌナに寄りかかってボーッとテレビの画面を眺める。
一位候補のグループとMCのリノヒョンたちがステージに立って、いよいよ発表が行われる。
｢……あっ一位だ｣
そのグループの名前が呼ばれて大きな音と共に紙吹雪が舞う。メンバーの人達はそれはそれは驚いた表情を浮かべ、すぐに涙を流して喜んでいた。
｢良かった｣
そう呟いたヌナは安堵の表情を浮かべている。自分が提供した故にプレッシャーもあったんだろう。
それでもやっぱり少し妬けてしまって、次のカムバックでいい成績が残せるように頑張ろうと決心した。
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作者名：ゼロ | 作成日時：2023年3月10日 22時
