. ページ18
.
｢ヨンボクはさ、そういう姿を見せてステイやそれを見た人の庇護欲を掻き立てるっていうか、それが強みになってるから。ヨンボクだからこそ見せれる姿だよ｣
｢そうなのかな……｣
｢そうだよ｣
いまいち実感が湧かないけど、ヌナがそう言うならそうなんだろう。でも僕だってあんまりステイにこんな泣きっ面見せたくないんだけどな……。
唸りながら考えていると、向かい側のベッドの上のヌナがこちらを向いて、静かな空間に優しいトーンで僕の名前を呼ぶ声が響いた。
｢これからも私たちは活動していくにあたってたくさん失うものがあると思う｣
｢……そうだね｣
｢でもね、結果論それでみんなが喜んでくれるなら私はいいと思うんだ｣
｢自分のことも大事にしなくちゃ｣
｢でもみんなの幸せは私の幸せみたいなところもあるし｣
｢ほんとうにそう思えるの？｣
｢思えるよ。ヨンボクは思わないの？｣
｢僕も思うけど……｣
ヌナのそう思うと僕のそう思うの重みがあまりにも違う気がしてハッキリと答えられないよ。
｢……ごめんね。ヨンボクが不安に思っているのを私が落ち着かせなきゃいけないのに。余計考えさせちゃったよね｣
｢ううん、こういう話できるのってこういう時しかないから。少し難しいけど｣
僕が、みんなが成長するにあたってこういうことを考える機会は必要だと思うから。
僕達はこれからも数多くの選択肢の中から最善を見つけて選んでいかなきゃならないんだ。
｢感受性の話から随分大きくなっちゃったね｣
二人で向かい合ってあまりにも深い話をしたから、急に我に返って少しおかしくなってきちゃって。目を合わせたらお互いに笑みが零れてしまった。
｢ヨンボクも大きくなったんだね｣
｢そりゃあもう22だもん｣
｢でもまだまだ甘えていいよ｣
｢ヌナがそう思ってるなら全然甘えるよ？｣
｢そういうところも魅力の一つだよ。ヨンボガ愛してる｣
ヌナが膝を抱えて座るのをやめて腕を広げてきたので、その隣に腰掛けてヌナに飛び込むように抱きついた。
やっぱりAヌナはAヌナだ。周りが変わったと言ったとしても、根本的なカヅキAという存在は変わらないはず。
ヌナのその思慮深いところと自己犠牲が強すぎるところ……これはちょっと短所にもなるかもしれないけど、僕にとってそれはあまりにも魅力的なものだと思うよ。
そう伝えると、ヌナはちょっとだけ困ったように眉を下げて笑みをみせた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 590人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ゼロ | 作成日時：2023年3月10日 22時
