それはあまりにも魅力的な ページ16
Felix
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Aヌナはよく僕のことを『魅力的だ』と褒めてくれる。
「リクスヤ、今日も号泣だったね」
「ヌナ〜もうそろそろ泣き疲れたよ。ステイは僕を泣かせるのが本当に好きみたい。あまりにも幸せで嬉しいけど、もうこれって新手のいじめだよ〜……」
「こらこら、そんな事言わないのー」
自分はサプライズ系にどうも弱くて毎回泣いてしまう。今日もステイからのサプライズ演出に一人で大号泣してしまった。
次の曲も始まるから泣くのをやめたいのに、どこを向いてもサプライズを用意した張本人であるステイたちがいるものだからどうしても涙が止まらない。
そしてその度にあらあらなんて駆けつけて僕のことを宥めるメンバーたちのせいで余計に泣けてくる。
でも普段表舞台では滅多に自分からハグしに来ないヌナが、この時ばかりは駆け寄ってきてくれて僕のことを抱きしめてくれるからそこだけはいいんだけどね。
「さすがに泣き虫って馬鹿にされる……」
「そんなことないよヨンボガ。人のためにこんなにたくさん綺麗な涙を流してくれる子なんてなかなかいないよ」
ステイにかっこいいフィリックスを見せようと頑張っているのに最終的には顔をくしゃくしゃにして大号泣しているイヨンボクを見せてしまって、それも毎回だからさすがに飽きられているんじゃないか、そろそろ愛想つかされるのではないかと急に漠然とした不安に駆られてしまった。
一度そう考えてしまったらいてもたってもいられなくなって、終演後ホテルに戻ったところで何となくヌナの部屋に来てみた。
不安が顔に出てしまっていたのか、ヌナは僕の顔を見るや否や優しく笑みを浮かべておいでと僕の肩を優しく抱き寄せ部屋に入れてくれた。
「昔からいつも言ってるけど、私はヨンボクのその感受性の豊かさが本当に魅力的だと思ってる」
「ヌナが僕を褒める時いつも言ってくれるよね」
「うん。嬉しい時は本当に嬉しそうに惜しみなく周りに笑顔を振りまけて、泣きたい時はしっかり泣ける。みんながなんて愛しいんだろうと思うくらい愛嬌があって表情豊か。それらってみんなの心にしっかり響くすごい武器だよ」
____全部、わたしには無いものだ。
ベッドの上で膝を抱えて小さくなって、少し俯きながらヌナは最後にそう言った。
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作者名:ゼロ | 作成日時:2023年3月10日 22時