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｢結婚しないで、居なくならないでなんてワガママは言えないから……だから私がみんなよりも先に結婚したらそう思うこともなくなるかなって｣
ああこのAって人は本当にどこまでもスキズが、俺たちのことが大好きなんだ。だってそんな発想……普通出来ないでしょ……。
｢そんなの別にワガママじゃないよ｣
｢ううん。すごいワガママだよ。だから私はみんなの幸せを優先したい｣
｢だって、そしたら俺たちだって悲しいじゃん｣
先に一人で結婚していなくなってしまうヌナと、突然取り残された俺たち……そっちの方が断然地獄絵図だと思わない？
俺が少し不貞腐れながらそう言うと、ヌナはそれもそうかもね、なんて静かに目を伏せながらまたどこか他人事のように呟いた。
｢そんなことを考えないといけない日が、まだ来なければいいのにね｣
練習生として事務所に入って、Aヌナに初めて出会った時からもう何年も経った。
当時からAヌナは何一つ変わっていないAヌナのはずなのに。それでも歳を重ね成長して大人びた雰囲気になったせいで、そんなことを考えなければならない日が少しずつ近くなっているということを嫌でも感じてしまって思わず目を背けたくなる。
｢……でも大丈夫。まだ良い人現れてないし急いで探すつもりもないから｣
そんな人現れてたまるか！探されてたまるか！そう叫びたくなったけど必死に堪える。
｢ヌナと結婚する人は俺たちよりいい人じゃなきゃみんな許さないと思うけど｣
｢いるかな｣
｢チャニヒョンよりリーダーシップがあって、リノヒョンよりダンスが上手くて、俺より屈強で愛嬌あって｣
｢ふふ、もう無理じゃん｣
｢ヒョンジンよりかっこよくて、ハニよりラップ上手くて、ヨンボクより魅力なきゃ。スンミンより歌が上手くてイエニより可愛い人じゃなきゃダメだよヌナ｣
それこそ、こんな人いてたまるかって人が完成してしまった。でも実際こんな人が現れない限り他の誰にもヌナを取られたくない。
｢それが絶対条件なら私は一生結婚できないね｣
｢そうだよ。だから今はそんなこと考えないで｣
もはやこの焦りと必死さが伝わるように、自分がどんな顔をしているか分からないけれどヌナとしっかり目を合わせて伝えた。
｢うん。今はみんなのことだけ考えるよ｣
料理が冷めちゃう、とヌナによって受け皿に置かれた胸肉も、あんなに美味しかったのに急に味がしなくなってしまった。もう、ヌナって人は。
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作者名：ゼロ | 作成日時：2023年3月10日 22時
