脱走11 ページ11
私には親がいないけど、紅や紺炉さん、ヒナヒカがいる。
隊員の皆も私に優しく接してくれるし、街の人だって温かい。
私を必要としてくれる人がいる。
浅草を出ていくのはもったいない、とは思うけど。
それでも、私は外の世界に行きたかった。
浅草生まれ浅草育ちの私は、1度も外に出たことがない。
浅草の中で全てのものが揃うし、紅丸達が揃えてくれるからだ。
最初は、外の世界なんてなんとも思っていなかったが、ある雑誌がきっかけをくれた。
その雑誌には、外の世界の流行について書かれていた。
この辺りでは見ないような服や機械、食べ物について特集が組まれていて、有名な観光スポットについても書かれていた。
なんて新しい、素敵なものなんだろう！
そう思ったのを、今でも覚えている。
中でも私が心を奪われたのは、特殊消防隊についてのページだった。
その時に、初めて第7以外の消防隊を見た。
それぞれの部隊によって構成員や能力、鎮魂の仕方が全く違っていた。
でも、共通点もあった。
それは
"一般人への被害を最小限にすること"
私は紅丸のなんでも壊す鎮魂を見ていたから、とても衝撃を受けた。
良く考えればそうなのだ。
浅草のやり方を全面否定するわけじゃないし、だからといって祈りを捧げるのに意味があるとは思わない。
でも、外の消防隊のように鎮魂出来たら、修理の手間や民間人の避難の対応なんかもいらなくなる。
2つのやり方のいい部分を取れば、合理的に鎮魂できる。
そう考えた私は、外の消防隊の火消しを見たくなってしまった。
実際見て、紅に言った方がきっと分かってもらえるはずだ。
そこで、私は浅草から出ることにした。
荷物はお金や着替えだけで、他のものは置いていった。
紅丸のいない時に出たはずなのに、雷門の所には、紅丸がいたのだ。
「A、どこ行きやがる。」
あの顔は今でも忘れられない。
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作者名：ウィンぷす | 作成日時：2019年9月30日 21時
