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政宗はその問いかけに対して、戦場を見やりどこか遠いところを見つめるような目をした。
<…いつからじゃろうな、>
こやつは仲間からの信頼に応えるために血が滲むような努力を重ねてきた。
いつからか…こやつは仲間を頼るということを忘れてしまった。
<膨らんだ信頼は、少し突けば簡単に崩れてしまう。…そうして、こやつは独りになった>
<!!>
他の刀剣が知らないであろう主人の過去に、大倶利伽羅は目を見開いた。
こんな暖かく、清らかな魂を持っている人間だ。
きっと仲間に囲まれ、暖かい場所で過ごしていたのだろう。
そう思っていたのに。
<…ここに来る前から、1人で戦っていた、のか>
<……誰もこやつの背中を守らない、こやつも己の身を守ろうとはしない。まるで…死にに行くために出撃しているようにすら見えた>
否、1人だけおったな。あの場を離れる直前までこやつの背中を守ろうとした男が。
<だが、そいつをもってしても…こやつの閉ざされた心を開くことはできなかった>
わしは、酷くもどかしい。
<…苦しむ戦友1人救えずして、何が奥州の王じゃ…!馬鹿め…!!>
<……それは、違う>
悔しさに唇を噛みしめた政宗に、大倶利伽羅は言った。
そして戦場を見据える柚希の背中を見つめる。
<主が今の今まで戦い抜いてこられたのは、あんたたちがいたからだろう>
あの白い帽子を被った軍師や、顔色の悪い黒の軍師。
数々の英傑たちが主を大切に想い、慈しんでいることは見ていればわかる。
<…主を1人にしなかったのは、あんたたちだ。主の心を救ったのは、…あんたたちだ>
<じゃが…!>
「――政宗さん」
呼ばれた名前に政宗は顔を上げた。柚希が、目の前に立っていた。
「…力を、貸してくださいますか」
<!…当たり前のことを聞くな馬鹿め!!お前のようなじゃじゃ馬、1人で戦わせるわけがなかろうが!!>
「……何か、泣いてませんか?どうしました、半兵衛殿か宗茂殿にからかわれましたか」
それとも小十郎殿に説教でも、と柚希は首を傾げる。
<泣いてなどおらぬわ馬鹿め!!行くぞ、歴史修正主義者などお前とわしと…その龍の刀がおれば楽勝よ!>
<!…ふっ、>
「…頼りにしてます」
柚希は龍の刀に龍の魂を宿し――戦場を駆けた。
<(いつか…こやつの背中に温もりが現れると良い)>
龍は密かに願うのだった。
あとがき:ユカさまへ→←【冷え切った背中】(ユカ・フォルティア様へ)
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ユカ・フォルティア(プロフ) - はい、大丈夫です。こちらこそ、忙しいのに、答えてくださり、ありがとうございます。無理しないでください (2018年3月11日 11時) (レス) id: 4012e6ec36 (このIDを非表示/違反報告)
柚子ポン酢(プロフ) - ユカ・フォルティアさん» リスエストありがとうございます!ネタが浮かび次第、投稿しますね!おそらく、大和+官兵衛&長谷部になってしまうと思いますがよろしいでしょうか? (2018年3月10日 21時) (レス) id: ef6e283f53 (このIDを非表示/違反報告)
ユカ・フォルティア(プロフ) - こんにちは、あともう一個討鬼伝と刀剣乱舞、お願いしてもいいでしょうか?討鬼伝から大和、戦国無双から、黒田官兵衛、刀剣乱舞からへし切長谷部でお願いします。これからも、がんばってください。応援してます。 (2018年3月9日 13時) (レス) id: 375b0a6911 (このIDを非表示/違反報告)
ユカ・フォルティア(プロフ) - ありがとうございます!すごく良かったです。そっか、秋水さんは知っているんですね。 (2017年12月20日 8時) (レス) id: 4012e6ec36 (このIDを非表示/違反報告)
柚子ポン酢(プロフ) - 杙さん» コメントありがとうございます!もちろん賢王との絡みは書く予定です。FGOを始めたのはつい最近で、色々捏造が入りそうですがそれでもよければ末永くお付き合い下さい^_^ (2017年12月19日 21時) (レス) id: ef6e283f53 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:柚子ポン酢 | 作成日時:2017年4月28日 21時