柚子ポン酢の備忘録：其の弐

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「森さんから伝言です。…“君の求めるものがここにあるかわからないが、知りたいことがあるなら好きなだけ調べるといい”という言葉と、ポートマフィア本部の情報区画のみ立ち入りを許可する権利です」

「おー…さすが大規模組織の首領。太っ腹だねー…」

身体を張った甲斐があった。

「…そこまでして、帰りたいのですか。あなたが本来いるべき場所に」

命の危険を冒してでも、と太宰は問いかける。

「帰りたいよ。待たせている人がいるから」

誰だ。この気まぐれな風のような人にそこまで言わせる人物は。

「――法正孝直、だね？」

ベッドに突っ伏していた乱歩が言った。

「白澤の相棒、悪澤・法正殿。あなたを待っているのはその人だ」

「おはよう、乱歩。ご名答だよ」

悪澤・法正。

白澤と呼ばれる柚希とはある意味対極に位置する悪党と名高い人物だ。

史実でも交流があったと聞くがそれは創作であるという噂もある。

「…どうしても、行かれるのですか」

福沢が目を開けて問いかけた。

「君たちと会ったときから言ってたよー…“ずっと一緒にはいられない”って」

私たちは本来出会うことがない存在。

いつか、世界の綻びが正されるとき…私は君たちの前から消えるだろうって。

――そして、その数か月後いつものように依頼へ行こうと武装探偵社を出た柚希は…その日以降武装探偵社に帰ってくることはなかった。

そして更にその数か月後…武装探偵社とポートマフィアは上空に現れた紫色の雲から降り注いだ光に呑まれ、建物ごとヨコハマから消失した。

武装探偵社とポートマフィアが飛ばされたのは遠呂智2の世界。

人類絶滅の危機に瀕した世界で武装探偵社は討伐軍に拾われた。

「…竹中半兵衛殿、でよろしいか」

「あなたが福沢諭吉殿だね？柚希殿からよく聞いてたよ、愛弟子だって」

「それは嬉しい限りですな。…師匠の行方を、ご存知ないか」

そう問いかけると半兵衛の目が悲しみに染まった。

「……柚希殿は、死んだよ」

それを告げた半兵衛も、聞いた福沢も…認めたくない事実であった。

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