柚子ポン酢の備忘録：其の弐

泣き虫天下五剣×文ストネタ ページ20

鬼丸國綱はブラック本丸に顕現してしまう。

そこの本丸は鬼丸だけが全く顕現しなかった鬼狂い審神者の本丸。

鬼丸を手に入れるために過度な出陣、遠征、鍛刀を繰り返し、重傷放置は当たり前。

折れていった刀も数多いという劣悪極まりない本丸であった。

あまりに出てこないため、審神者は親のコネを使い鬼丸本霊を引きずり落とす。

ようやく顕現した鬼丸國綱(本霊)は刀剣たちから仲間として受け入れてもらえず、酷い扱いを受ける。

最初こそ夜に声を殺して涙を流していた鬼丸だが、そのうち心が完全に凍り付き涙を流せなくなる。

審神者の欲に塗れた穢れで体調を崩しながらも傷ついた刀剣たちの代わりに単騎出陣。

集めた資材で刀剣の手入れを頼み込む。

連隊戦を１人で戦い抜き、偶然髭切を見つける。…が、鬼丸はそこで限界を迎えた。

「…髭切殿…あの本丸は、審神者の欲によって穢れて、しまった…」

全てはあの審神者を狂わせた、私のせいだ。

「あなた程の名刀が…あの本丸に行くべきではない、それは…わかってます」

それでも、どうか……どうか、私の願いを聞き届けてはくれませんか。

「あなたを、…ゲホッ…心待ちにしている刀剣がいます。…あなたを寄る辺にして、知己が折られる地獄を生き抜いている刀剣がいる」

彼を…彼らをお救いください。

「…汚らわしい鬼に狂わされた、本丸を…どうか…」

――大丈夫。…鬼は全部僕が斬ってあげるからね。

優しい声が聞こえると鬼丸は心の底から微笑みを零し、その場に倒れた。

――…君は、…君を大切にしてくれる世界に飛ばしてしまおう。

今までずっと独りで戦ってきた、…泣き虫な君が幸せになれるように。

――君の幸せのためには…刀剣男士は邪魔でしかないようだね。

寂しいけれど、これも君のためだ。

髭切(本霊)は倒れた鬼丸の頭を優しく撫でて寂しげに微笑んだ。

髭切がスっ…と手をかざすと鬼丸は光に包まれる。

――幸せになるんだよ、國綱…。今まで弟を、刀剣たちを守ってくれて…ありがとう。

光が収まるとそこに鬼丸の姿はなかった。

「…さーて、鬼退治の時間だね？」

僕の弟と、腹心を苦しめた愚かな人間(鬼)よ…覚悟しろ。

・続き→←・親友＜とも＞の覚悟

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す