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空蝉丸はある晩、屋根の上で酒を煽っていた。デーボス軍との戦いが始まった頃だ。そして初夏と言え夜は肌寒く、昼間のような薄着で縁側に座っていたAを見かける。

蝋燭を一つ傍において月を見上げ、歌を詠んでいるその姿に、向こうからは見えない事をいいことに、やはり目が釘付けになってしまう。

「彼のすがた…待ちぼうけては夏の夜……蝋の灯りが消える頃まで…。」

細く消え入りそうな声だった。まるで地面に落ちてすっと消えてしまう雪のようだ。

「どうか……明日も無事で居てくれ。」

空蝉丸はあっと察した。姫の想い人だろうか、殿のことだろうか、とにかく誰かの為に声をふるわせている。月に願いを込めてまばたいている。ますます自分が近づいてはならないのだろうと、直感がそう言った。

柔らかい涼しい風が吹く。屋根の上でも下でも風が通り過ぎて髪を撫でていく。会話せずとも顔を合わせずとも、同じ時を過ごすことが心地よく感じられていたその時だ。

「……空蝉丸。」

耳に入った言葉は現実なのだろうかと、彼は何度も疑った。まさか自身の名だとは思ってもいなかった彼は、いつかのように心臓の鼓動を加速させていく。

またしばらくして、夜風が回る血を冷やし始めたころ、彼は庭に降りて姫の部屋へ向かった。未だに月を見ている姫の体を心配して、というのもあるが、なによりも期待に胸をふくらませていた。酒の勢いもあり、普段ならしない事が出来てしまった。

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Akira_s2(プロフ) - YUKIさん» 返信遅くなりました💦リクエストありがとうございます。受付ましたが、お知らせもした通り、しばらくお待ち頂くことになるかと思います。ご理解よろしくお願いします😢 (5月3日 0時) (レス) id: 4fceb90968 (このIDを非表示/違反報告)
YUKI(プロフ) - リクエスト失礼します!ルパパトの高尾ノエルさんってできますか?出来たら高尾ノエルで死ネタをお願いしたいです! (4月14日 13時) (レス) id: 5825403805 (このIDを非表示/違反報告)
Akira_s2(プロフ) - スピカブラックさん» リクエストありがとうございます!更新まで暫くお待ちください☺️ (4月13日 20時) (レス) id: 4fceb90968 (このIDを非表示/違反報告)
Akira_s2(プロフ) - 恐ろしの竜さん» すみません!ありがとうございます😿 (4月13日 20時) (レス) id: 4fceb90968 (このIDを非表示/違反報告)
恐ろしの竜 - 書き込み失礼致します。小説内で「ドゴルド」が「ドゴルドン」に、「デーボス軍」が「デイボス軍」になっています...💦💦そこだけ気になったので訂正して頂けると嬉しいです。 (4月13日 12時) (レス) @page19 id: 42ee6c3683 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:Akira_s2 | 作成日時:2024年3月17日 22時

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