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白か黒か 三原修二 ページ6

三原修二は帰る家を探していた。

「ここは…どこ?」

都会に高いビルが立ち並び、行き交う人々は自分のことなど見向きもしない。

「家は…どこ?」

誰に問いかけても耳を傾けては貰えなかった。


彼は瞬きをした。これは夢の中だと理解する。いつも見る独りぼっちの世界だ。


『家はないよ。』

『オルフェノクにみんな住む場所を奪われたの、キミだけが帰れると思わないでね。』

でも今日は違った。黒い服を着た女の子が彼に語りかけ、精神を蝕むようにその孤独を押し付ける。


『そんな事ないわ。生き残った人間が集まって暮らす集落があるの。』

『諦めないで、アナタの家を探しましょう。』

そして反対側から白い服を着た女の子が現れた。どことなくどちらの姿も似ている気がするが、顔はどちらも霞んで見えない。彼は冷静になって、これは天使と悪魔の囁きか何かかと思った。

「俺は…、どこへ行けばいい。」

『どこにも行けないよ。』

『ここへいらっしゃい。』

二人の少女は彼の方へ手を伸ばす。悪魔のような黒い彼女は、その背に両腕を回し、ここへ留まるように呪いをかけようとする。深い深い闇に沈んでいきそうだ。

「それは嫌だ…!」

彼はまだ足掻こうとした。帰る家のないこの世界で帰る場所を見つけたかった。

『さあ、手を伸ばすのよ。』

白い天使のような彼女は手を伸ばすも、自ら触れようとはしない。

「うっ、帰るんだ、俺は…この世界で、何ができるか分からないけど!」

闇から一筋の光が差し込んだ。手を伸ばして触れた先は、頬に煤をつけたAだった。

『おかえり。』

彼女は夢から現実へと帰ってきた修二に向かって微笑む。彼に見える景色は、彼女のAと細々と暮らす難民キャンプの部屋だ。

「あぁ…ただいま。」

彼は夢で見た女の子を思い出した。どことなくその影がAに似ている。ずっと一緒に居るせいで、夢で彼女を登場させていたのかもしれないと、納得がいった。こんなボロボロの家でも、ここは自分の家だと、彼は笑った。

−−−−−
end

真っ白な洗濯物と 菊池啓太郎→←白馬の王子様 木場勇治



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Akira_s2(プロフ) - あめだまさん» リクエストありがとうございます!剣崎くん承知しました☺️更新までしばらくお待ちください (5月6日 21時) (レス) id: 4fceb90968 (このIDを非表示/違反報告)
あめだま(プロフ) - 初めまして!コメント失礼します!仮面ライダー剣の剣崎一真って可能でしょうか? (5月6日 17時) (レス) id: 4eb730f803 (このIDを非表示/違反報告)
Akira_s2(プロフ) - 陽炎さん» 読んで頂きありがとうございました! (3月4日 22時) (レス) id: 4fceb90968 (このIDを非表示/違反報告)
陽炎 - 本当に素晴らしいお話をありがとうございます! (2月28日 15時) (レス) id: e05c80d031 (このIDを非表示/違反報告)
陽炎 - リクエストに答えて頂いてありがとうございました!! (2月28日 15時) (レス) @page19 id: e05c80d031 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:Akira_s2 | 作成日時:2024年1月13日 23時

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